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「かわいい後輩」を守ったガーナ戦の吉田麻也に見る、欧州サッカーでの「自己主張とわがまま」の境界線って? 

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吉崎エイジーニョ

吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki

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photograph byKiichi Matsumoto/JMPA

posted2021/06/16 17:03

「かわいい後輩」を守ったガーナ戦の吉田麻也に見る、欧州サッカーでの「自己主張とわがまま」の境界線って?<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto/JMPA

日本代表キャプテンとして強いキャプテンシーを見せる吉田麻也

 日本でも感覚的に理解できる話ではないか。冒頭の吉田麻也のように味方のために激怒する。吉田自身は「かわいい後輩を守った」と上下関係からの行動とも取れる言葉と口にしたが、別の角度から言えば、選手のケガは多くの望む目標「代表チームのより大きな勝利」に背くものだ。

「公益」「パブリック」「みんなのため」。要はそういう話なのだが、サッカーで圧倒的に結果を残してきたキリスト教社会では、これがもっと「根深い」。ここを理解しないと、このサッカーという種目も理解できない。

 実のところこういった「西洋的な自立した個人」と「東洋的な相互協調型の個人」の比較論はこれまでも多く繰り広げられてきた。

 筆者は前者について、サッカー的文脈から一歩踏み込んだ定義を加える。この世界で圧倒的な結果を残してきたキリスト教社会では、このような考えがベースとなる。

 ”個性を発揮し、考えを主張しろと教育を受ける。この個人の尊厳ある能力を以て、公益に貢献するための少々の<荒業>には寛容。しかしいっぽうで、パブリックの掟は厳しい。それが公益に即するのか? この点を厳格に見られている”

 ちなみに吉田の行動について、ブラジル(キリスト教文化圏)出身の田中マルクス闘莉王は大絶賛している。

セルヒオ・ラモスの選考外にルイス・エンリケは……

 6月の代表戦連戦も終わり、これと前後して、ヨーロッパ選手権が幕を開けた。スペインのルイス・エンリケ監督が、今季コンディションが整わなかったセルヒオ・ラモス(レアル・マドリー)をエントリー外としたことについて、会見で背景を明らかにした。本人に電話で告げ、これが「難しく辛いこと」だったという。

 そしてこう続けた。

「気分は良くないよ。彼は真のプロフェッショナルで、代表チームにとって大きな助けだ。未来にもそうすることができる。しかし、私はチーム全体の利益を求めている。彼に対しては、エゴイストになることを勧めた。しっかりと回復して、クラブと代表でプレーしていくようにね」

 エゴイストになれ。チームのために。一見矛盾しているような表現が、大事な場面でも使われる。これが欧州キリスト教社会=サッカーの世界なのだ。

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