濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「私けっこう性格悪いんで(笑)」K-1で菅原美優に勝利したMIOが“RENAの妹分”からの独り立ち 「本当に楽しいです、今」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2021/06/05 11:01
試合前日の会見でのMIO(左)と菅原美優
「やめなくてよかったなって、本当に思います」
“姉”のRENAがRIZIN参戦で新たなモチベーションを得たように、MIOもMMA挑戦が転機になった。
「間違いなくターニングポイントでした。とにかく刺激的で。“もう終わりかな”と思ってたのに“もっとできるんじゃないか”、“もっと挑戦したい”という気持ちになれた。やめなくてよかったなって、いま本当に思いますね」
引退するか、新たな舞台でチャレンジをするか。悩んだ末に選んだのがK-1だった。ルールに慣れていくと、格闘技生活そのものがどんどん楽しくなっていった。生まれ変わったようだった。
「だから伸び悩んでる人がいたら“環境を変えるのも一つの手だよ”って言いたいです。元いたところを離れることで批判されるかもしれないけど、乗り越えたらいいことあるよって」
かつての自分について「そのことについては感謝もしてるんですけど、守られすぎてましたよね」とMIO。彼女には常に何かしらの肩書き、ポジションがついてまわった。“及川道場の秘蔵っ子”であり“RENAの妹分”であり、常にシュートボクシングという独自ルールの“流派”を背負ってもいた。
「そこで気を遣って、いい子ちゃんになってたところはありますね。“まずお姉ちゃんありき”じゃないですけど。でも今は野放しなので(笑)。もっともっとMIOという存在を知ってほしいし、素を出していきます」
「私けっこう性格悪いんで(笑)」
今回の試合前には“回転寿司ツイート”が話題になった。菅原が回転寿司で21皿を積み上げた写真をツイートすると、MIOは同じ構図で31皿積んだ写真をアップ。それを見た菅原はゾッとしたそうだ。そんな形で対戦相手に“攻撃”されたことはなかった。
「可愛いからいじめたくなっちゃうんですよ」とMIO。「オフの日にお寿司食べに行って、そういえばって思いついたんです(笑)。菅原選手の写真でお皿の数を確認して、それ以上食べてやれって」
ちょっとしたイタズラ心だったが、MIOは「私けっこう性格悪いんで(笑)」とはっきり言うのだった。
「たぶん菅原選手も似たような性格だと思うんですよ。だから仲良くはなれないですね。まして、また闘う可能性もある相手なので」
言いたいことを言う自分を楽しんでいるということだろう。“野放し”の自分に自信があるからそれもできる。
「自分の実力だけで勝負して、結果を出していきたい」
プロデビューからもうすぐ10年。“K-1ファイター・MIO”について、本人はこう語っている。
「やっと、いちファイターとして1人で立ててるなって気がしてます。そういう部分でもこれからです。本当に楽しいです、今」
彼女のことはデビュー戦から取材してきたが、変われば変わるものだ。関西人ですからねぇ、性格エグいですよと笑う姿に、ちょっと感動すら覚えた。
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