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最強女王・エナンが39歳に 「嘘つきでずるい人」セリーナを激怒させた“18年前の知らんぷり事件”とは?
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph byGetty Images
posted2021/06/01 11:00
本日6月1日にジュスティーヌ・エナンの39回目の誕生日だ
「ウィリアムズ姉妹はすごく威圧感があって怖かった。彼女たちのどちらかがコートに入るとき、いつももう一人がすでに味方の席にいた」と。
ちなみに姉のビーナスには2勝7敗と、対セリーナよりも大きく負け越している。
エナンにとって「テニスはあらゆる感情のはけ口だった」
当時のウィリアムズ姉妹、ウィリアムズ一家の結束の固さ、その威圧感は確かに異質で、エナンの回顧は本心だろう。その恐怖心は、自身が家族の愛情に恵まれていなかったこととおそらく無関係ではない。幼くして母をなくし、プロになった頃から父や兄と不仲に陥り、ついには絶縁にいたっていた。確執の原因は、14歳のときにコーチに迎えたカルロス・ロドリゲスや、のちの夫となる恋人のピエール・イブ=アルデンヌとの関係を父が認めなかったためだといわれる。
しかし2007年に離婚すると、7年間も絶縁状態だった父や兄とのわだかまりを解き、彼らの家族とも打ち解けた。そして翌年、世界ランク1位のまま25歳の若さで電撃引退した。最後までエナンのコーチであり続けたロドリゲスは、こう語ったものだ。
「ジュスティーヌにとって、テニスはあらゆる感情のはけ口だった。すべてが勝つことへの執念になっていた。でも今、とても幸せで充実した生活を手に入れて、勝つことがすべてじゃなくなったんだよ」
2年も経たずに再びコートに戻って来たのは、グランドスラムで唯一手にしていなかったウィンブルドン・タイトル獲得の野望が再び膨れ上がったからだったが、それは叶わないまま2度目のキャリアは1年あまりで幕をおろした。
セリーナは「自分が戦った最高の選手」
6月1日に39歳の誕生日を迎える。今は再婚して2人の子供を育てる母親だ。全盛期をともに戦ったライバルたちの多くはすでにコートを去った。しかしセリーナはまだトップの一人として戦い続けている。エナンは公の場でマスコミに問われるたびに、セリーナを「自分が戦った最高の選手」と語り、史上最多タイとなる24回目のグランドスラム優勝の可能性にも期待を寄せている。いつの日か、心温まる和解のエピソードを聞きたい。