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ケニア人選手にとって箱根駅伝は“特別な大会”ではない… 「稼げない」大学陸上界に留学生を招いた指揮官の使命 

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酒井政人

酒井政人Masato Sakai

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photograph byL:Yuki Suenaga R:JMPA

posted2021/05/27 11:00

ケニア人選手にとって箱根駅伝は“特別な大会”ではない… 「稼げない」大学陸上界に留学生を招いた指揮官の使命<Number Web> photograph by L:Yuki Suenaga R:JMPA

関東インカレで別格の走りを見せたイェゴン・ヴィンセント(東国大)は21年の箱根駅伝でも区間新記録を打ち立てていた

関東インカレで起こっている“留学生問題”

 関東インカレは各種目の入賞者に得点(1位8点で2位以下は1点ずつ減少)が与えられ、その総合得点で順位がつく。1部は下位2校が降格となるが、今年は留学生の存在が明暗をわけた。

 降格となった総合15位の城西大は12点、同16位の国際武道大は5点。両校に留学生はいない。一方、総合14位の流経大は16点で1部残留を決めた。得点すべてが新戦力のディランゴがもたらしたものになる。同13位(17点)の駿河台大は1500mと4×400mリレーで入賞しているとはいえ、ジェームズ・ブヌカが長距離2種目で11点を奪ったのが大きかった。

 学生駅伝(出雲、全日本、箱根)では、留学生の出場は1校1人と決められているが、関東インカレに制限はない。複数の留学生を出場させている大学もある。あまり知られていないが、関東インカレでも“留学生問題”は起きている。

「留学生を一度入れるとやめられなくなる」

 そして箱根駅伝をめぐる戦いにおいても、留学生が欠かせない存在になりつつある。昨年10月の予選会では、国士大、山梨学大、拓大、駿河台大、日大、平成国際大、日本薬科大、桜美林大の8校がケニア人留学生を起用。今季は流経大が13年ぶりに留学生を入学させただけでなく、専大と大東大が初めて留学生を招聘しているのだ。

 今年7年ぶりの箱根出場を果たした専大は大分東明高2年時に5000mでインターハイ2位、国体少年A優勝の実績を持つダンカン・キサイサが入学。3年ぶりの箱根復帰を目指す大東大には仙台育英高、コモディイイダを通じて合計6年間、日本で競技を続けてきたピーター・ムワンギが加入した。両校とも箱根駅伝に50回以上出場して、総合優勝も経験している古豪。もはやケニア人留学生は新興勢力の“専売特許”ではなくなっている。

 7~8年ほど前、強豪校のある監督は、「留学生を一度入れるとやめられなくなる」とこぼしていたが、本当にその通りになった。

 10月の予選会ではケニア人留学生の争いがさらに激化するはずだ。本戦では留学生ひとりのパワーで上位を奪うのは簡単ではない。しかし、予選会では留学生がタイムを稼ぎ、日本人が集団走で手堅くまとめるという戦術が顕著になるだろう。そうなると留学生のいない大学は予選会を突破するのが難しくなり、留学生を入学させるチームがさらに増えるのではないだろうか。

【次ページ】 「学ぶ」よりも「稼ぐ」意識が強い

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