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ケニア人選手にとって箱根駅伝は“特別な大会”ではない… 「稼げない」大学陸上界に留学生を招いた指揮官の使命 

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酒井政人

酒井政人Masato Sakai

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photograph byL:Yuki Suenaga R:JMPA

posted2021/05/27 11:00

ケニア人選手にとって箱根駅伝は“特別な大会”ではない… 「稼げない」大学陸上界に留学生を招いた指揮官の使命<Number Web> photograph by L:Yuki Suenaga R:JMPA

関東インカレで別格の走りを見せたイェゴン・ヴィンセント(東国大)は21年の箱根駅伝でも区間新記録を打ち立てていた

「学ぶ」よりも「稼ぐ」意識が強い

 かつての山梨学大はケニア人留学生と日本人選手が互いに学び、チーム一丸となって、箱根駅伝で3度の総合優勝に輝いた。近年では、東京五輪の男子10000m日本代表に内定している伊藤達彦(Honda)が東京国際大在学時に練習で留学生に挑み続けて急成長した。一方、実際に取材をすると、3~4年生になっても日本語でコミュニケーションをとるのが難しい選手も多くいる。

 ケニアから来日する選手の大半は、わずかな奨学金を貯金して、家族に仕送りをしている。彼らは日本で「学ぶ」ということよりも「稼ぐ」という意識の方が強い。コロナ禍で選手を現地で見極めることができないという理由もあるだろうが、近年は日本の実業団を経由して入学するケニア人選手が増えているのも気になる。

 大東大のムワンギだけでなく、1部で長距離2冠を達成したディランゴも実業団のサンベルクスを経て、26歳で流経大に入学した選手だ。現在3年生のチャールズ・ドゥングも小森コーポレーションを経て23歳で日大に入学している。

留学生にとって箱根駅伝は特別ではない

 このような状況を冷ややかな目で見ている関係者は少なくない。ケニア人選手を抱えるチームのある監督は、「実業団あがりの選手が大学に行ってもあまりモチベーションは上がらないんじゃないでしょうか。実業団はお金をもらって競技をしますが、大学ではそれほど対価をもらえませんからね。日本での生活経験があるので受け入れる側は楽でしょうけど、しっかりと面倒を見てあげないと頑張れないと思います」と話している。走力のある留学生を獲得したからといって、チームが強くなるとは限らないようだ。

 留学生のなかには1年目に強烈なインパクトを残しても、年々パフォーマンスを下げていく選手がいる。日本では絶大な人気を誇る箱根駅伝だが、ケニア人にとっては特別なものではない。創価大や東京国際大のように日本人選手が区間賞争いをするようなチームでないと箱根駅伝で勝負するのは難しい。留学生の存在をうまくいかして、チームをどう強化していくのか。指揮官たちの“指導力”が問われている。

【次ページ】 留学生の増加はプラスの面が大きいから

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