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「だめですよね、選手として」…五輪3大会出場、33歳目前の福島千里が挑む東京五輪2つの壁 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2021/05/23 06:00

「だめですよね、選手として」…五輪3大会出場、33歳目前の福島千里が挑む東京五輪2つの壁<Number Web> photograph by AFLO

15日の東日本実業団選手権100mの決勝後、「向かい風を考慮しても、トップスピードが絶対的に遅い」「自分が情けない」と悔しさをにじませた

 今年の6月に33歳を迎える。長年、打ち込んできた疲労の蓄積が不調の要因と見る向きもあるし、身体は若い頃と同じではない。

 それでも、前を向く。

 今年3月、順天堂大学競技会で11秒86(追い風1.2m)、4月の同競技会では11秒97(追い風1.4m)をマーク。昨年は一度も出せなかった11秒台を出せた。4月29日の織田記念は左太もも裏痛で欠場したが、痛みは消えている。

「復帰できたことはよかったです」

 一定の評価はしつつも、ぶれることのない東京五輪という目標までの道のりは険しい。代表になるためには、まずは6月下旬の日本選手権出場が前提となり、参加するためには設定されている11秒84のタイムをクリアしておかなければならないが、残された時間は少なく、6月6日の布勢スプリントがラストチャンスとなる可能性が高い。

五輪への高いハードル

 日本選手権に出場できても、100mの個人種目の代表になるための参加標準記録は11秒15。福島の持つ、11年塗り替えられることのなかった日本記録は11秒21。そこにも壁がある。

「(記録は)高いな」と思いつつ、そう感じる今の自分に対し、「いちばん近いところにいたはず」とその実績ゆえに悔しさも示す。

 それでも、「目指さないわけにはいかない」とオリンピックを見据える。

 五輪出場を果たし、日本で頂点に立った後も「今の、今までの自分では成長はない」と変化を求め進んできた。ときに重心を前に置くフォームにかえたり、技術的な改善を求め、結果を出しているときの自分に安住しなかった。新たな自分をみつけようと歩んできた。

 重なる故障でその成果を発揮できていない状況であっても、根底の探求心に衰えはない。

 険しい道のりをどう進んでいくのか。福島は可能性を信じ、取り組んでいる。

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