「サッカーゆるトレーニング」（略して「ゆるトレ」）とは、武道家の高岡英夫の理論が元になっているトレーニングだ。簡単に言えば、体を力まずに使えるようにし、それによって体を自由自在に操れるようにするための練習法である。

　原はテレビ番組『フットブレイン』と人気漫画『フットボールネーション』をきっかけに「ゆるトレ」の存在を知り、同理論をサッカーに応用している松井達也トレーニングコーチから指導を受けている。

「『ゆるトレ』は筋トレとは逆の発想で、力を抜くトレーニングです。体をいかに脱力させて、しなやかに動けるようにするかというもの。プロ1、2年目に必死に筋トレをしたんですが、そうしたら体の外側ばかりに筋肉がついて動きが重くなってしまった。そんなときに『ゆるトレ』に出会い、体をうまく扱えるようになっていきました」

　成果はすぐに現れた。プロ3年目にJ3で爆発し、19得点を決めて得点王に輝いたのだ。

「僕は自信を持てないタイプなんですが、『ゆるトレ』をやって初めて『世界のトップへ行けるんじゃないか』という気持ちが芽生えた。今『ゆるトレ』のおかげで、ヨーロッパで階段を上がっていけると思えています」

「いつか日本代表でタケフサと2トップを組みたい」

　原にはサッカー選手として、大きな目標が2つある。

　1つ目はマンチェスター・ユナイテッドのエースになることだ。

「ヨーロッパのビッグクラブで、ストライカーで活躍し続けた日本人選手はまだいない。1人でもそういう選手が出たら、子供たちに夢を与えられる。僕はマンチェスター・ユナイテッドが好きなんで、そこでエースになるのが夢です。僕は遅咲きのタイプなので『いつまでに』という計画は立てていません。焦らず、自分のペースでそこへたどり着きたいです」

　2つ目は日本代表で久保建英と2トップを組んで、W杯で日本サッカーの最高成績を収めることだ。

写真は2017年のJ3で。原（45番）は久保（41番）と2トップを組むことが多かった　©J.LEAGUE

「タケフサとはFC東京で2トップを組んでいて、そのときのコンビネーションを忘れていない。いつかタケフサと日本代表で2トップを組みたい。今は僕が遅れているんで、早く追いついて追い越さなきゃという気持ちです。

　小1のとき、初めてW杯（06年）を見て、柳沢敦選手がクロアチア戦でシュートを外したときは本当に悔しかった。子供ながらにすごく腹が立った。ずっと日本代表の選手たちに憧れて、サッカーをやってきた。自分たちの世代で日本のW杯最高成績を塗り替えたいです」

　FC東京ユースの落ちこぼれは、久保建英から刺激を受けて覚醒し、父親譲りの研究心を生かして武器を身につけ、ヨーロッパ5大リーグのスカウトが注目する有望株になった。新世代のストライカーは、大きな目標を前にしても構えることはない。何事にも力まず、心と体をゆるめたまま、自分のペースで道を歩んでいる。

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