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鈴木優磨25歳が明かす“未来予想”「高望みの移籍は100%しない」「俺みたいな選手が1人くらいいても……」
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph bySSTV
posted2021/05/20 17:03
ベルギー2シーズン目となった今季は17得点をマークし、「クラブ年間MVP」を獲得した鈴木優磨(25)
「正直、最初に来たときは、すぐにチャンピオンズリーグ出場という夢を叶えて、プレミアへ行って、日本へ早く帰りたいと思っていたんです(笑)。でも、今はできるだけこっちで長くやりたい」
――やっぱり楽しい?
「日本とは、ゴールの喜びがまったく違うんです。大きいとか小さいとか、上とか下とかじゃなくて。もう種類が違う。ベルギーでそれを感じているくらいだから、5大リーグで決めるゴールなんてもっと気持ちいいのかなって。そう考えるとできるだけ長くヨーロッパでプレーしたいなって思います」
――2シーズンしか経っていませんが、ベルギーリーグに爪痕は残せましたか?
「爪痕残したというか、一番下の土台を1個作れたという感じで、これからどんどん進んでいくだけです」
――その土台には、もう家は建ちますか?
「まだかな。一気には建たないとは思います。その代わり強い土台を作って行くので」
立つ場所ではなく、いかにそこで生きているか
わずか2シーズンだ。
10シーズン近く欧州でプレーしている選手たちを取材してきた経験からいえば、この言葉に尽きる。鈴木の良さを理解してくれるベテランFWの存在が、今季の活躍を後押ししてくれたのも事実だろう。恵まれた環境を導いたのは鈴木自身の苦悩が結実したことも否定はしない。しかし、理不尽な現実がいとも簡単に訪れる可能性も小さくはない。契約が足かせとなって、身動きが取れなくなるケースもあるし、怪我という不幸もあるかもしれない。
そんなネガティブな想定を鈴木も描いてはいるだろう。
だからこそ、実直に着実にステップアップをしたいと考えているのだ。
欧州での選手生活の成功は、立つ場所ではなく、いかにそこで生きているかだ。納得はできずとも、それがたとえわずかであっても、希薄なものであっても、納得感を得るためにもがく日々。その過程にこそ、意味がある。
日の丸を背負い、世界と戦う鈴木優磨も見てみたい。
彼の未来はいつだって白紙だ。そのキャンバスにどんな絵を描くのか? それは誰にもわからない。
(【前回を読む】鈴木優磨が悩んだ“ストライカーのジレンマ”「でも俺は自分のためだけにサッカーをするのは、無理だなって」 へ)