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錦織圭「死人が出てまで…」だけじゃない意見とは 大坂なおみやナダル、セリーナの率直さと“五輪との微妙な距離感” 

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長谷部良太

長谷部良太Ryota Hasebe

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photograph byJMPA

posted2021/05/13 17:30

錦織圭「死人が出てまで…」だけじゃない意見とは 大坂なおみやナダル、セリーナの率直さと“五輪との微妙な距離感”<Number Web> photograph by JMPA

2016年リオ五輪時の錦織圭。銅メダルを獲得し、その4年前のロンドン五輪でも活躍した

英語による回答としては異例の長さ

「まだ数カ月はあるし、大会が行われるべきかどうかを今言うのはとても難しい。直前には決めるべきと思うけど、今は難しいと思う。選手のことだけを考えればできると思う。バブルをしっかり作って開催できれば。でも、それでもリスクは残る。選手村の中で数百、数千の感染者が出るかもしれない。コロナの感染は簡単に広がる。だから、なおみが言ったのと同じように、どうやって安全に開催するか、しっかりと議論しなければいけない」

 錦織はここまでを一気に話した。英語による回答としては異例の長さだった。熟考した末にたどり着いた彼なりの意見を、率直に話したという印象を受けた。

 続いて行われた日本メディアとのやり取りでは、「東京五輪が開かれれば出るつもりか」と問われた。ここからは日本語で回答している。

「まあそうですね。出ないという選択肢は、なかなか難しいです。本当に安全に開かれるならもちろん開かれるべきだし。でも、この状態で僕は何とも言えないですね。どれくらいの政策(筆者注:感染対策というニュアンスか)が行われるのかが全く分からないので。『こういう風にちゃんとやるよ』と表明してくれれば僕も意見を言えますけど、なかなか内部でどういう相談が行われているかが分からないので。でも究極を言えば、1人でも感染者が出るなら、あんまり気は進まないですけどね」

 さらに回答は続いた。

「例えばですけど、死人が出てまでも行われることではないと思うので。究極的には1人もコロナの患者が出ない時にやるべきかなとは思います。(ただ、)政治のこともあるだろうし、内部のことは分かんないので……」

2人がここまで率直に発言できる背景とは

「死人が出てまでも……」という表現はかなり強い言い回しだったが、万全な対策を取っていたにもかかわらず昨年夏に新型コロナに感染し、脅威を肌で感じた経験がある錦織にとっては、その言葉が最も適切に思えたのかもしれない。

 以上、大坂と錦織がコロナ禍での東京五輪開催に関して述べた発言の、ほぼ全文を紹介した。世界的に名前が知られた日本のトップアスリートが東京五輪開催についてストレートな意見を述べたことで、日本だけでなく海外メディアにも広く報じられることになった。

 2人がここまで率直に発言できるのは、アマチュア競技とは異なるプロテニス選手の環境が背景にあるという見方もある。

【次ページ】 ほとんどのテニス選手の目標は……

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