Overseas ReportBACK NUMBER
「五輪選考会の標準記録も可能」NFL屈指の俊足選手が100m走に挑戦 “ボルトより速い〇〇選手”論に終止符?
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byGetty Images
posted2021/05/13 11:01
5月9日にカリフォルニアで行われた大会の陸上100mに出場したNFL選手のメトカーフ
このプレーをみた人たちが「メトカーフは100mで米国代表になれるんじゃない?」とSNSで大盛り上がり。
米国陸連はすぐに反応し、「オリンピックの100mやリレーチームにDKメトカーフはどうか、というコメントが届きましたが、NFL選手の皆さん、『リアルなスピード』に興味があったら、オリンピック選考会にぜひご参加ください」とツイート。
メトカーフはそれに返信することはなかったが、シーズン終了後、ひそかに練習を積んでいた。
レース6日前に、陸上スパイクを地面に置く動画をアップ。それは100mのレースへの参戦表明だった。
米国陸連などからメトカーフの100m挑戦のニュースが発表されると、陸上やアメフトだけではなく、まさに全米のスポーツファンの話題になった。
レース参加に“あの選手”は「そもそも敬意が感じられない」
メトカーフの挑戦には、多くの意見が飛び交った。
「楽しみ」「絶対にTVを見る」という声がほとんどだったが、否定的な意見もあった。
アトランタ五輪200m、400mで2冠のマイケル・ジョンソンは「陸上競技は魅力的な競技だから、わざわざアメフト選手を呼んで注目を集める必要はない。そもそも敬意が感じられない」と怒りのツイート。それに賛同する関係者や選手もちらほら見られた。
自分たちの聖域に、違うスポーツの選手が入ってきてほしくないというのは暴論だ。過去にマイケル・ジョーダンは野球、ウサイン・ボルトもサッカーに挑戦したことがある。
一方で興奮が抑えられないアメフトライターやファンたちは「メトカーフの最高時速36.44kmを100mに換算すると9秒88。期待できる」と机上の空論をSNSで展開する始末。ちなみにボルトの最高時速は44.72kmで100mに換算すると8秒05(世界記録は9秒58)。陸上の100mというのはスタートから最高速度を出すのは当然ながら不可能で、また90m以降に減速するため、「ずっと最高時速で走り続けられたら」というのは成立しない。
場外での舌戦をよそに、対戦する陸上選手たちは、「アメフトと陸上のスピードは別物。そもそも100m走りきれるのかな。それが心配」、「色々言う人がいるけど、勇気のある挑戦だと思う。ベストを尽くしてほしい」、「メトカーフの挑戦のおかげで話題になってありがたい」など、好意的な声が多かった。