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直前にトランプ遊びも「まさかのノーヒッター」 秋山翔吾の復帰戦を飾った“先発の5番手”マイリーって誰だ?
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2021/05/12 11:01
ノーヒッターを達成したマイリー投手に駆け寄る秋山翔吾(4番)
いつもと違うことがあるとすれば、それは彼の右前腕にキャプテン・アメリカやアイアイマンと並ぶスーパーヒーローの一人、超人ハルクの刺青ステッカーが貼られていたことだ。それは4歳になる息子のジェブ・マイリーのプレゼントだった。
「(超人ハルクみたいな)筋肉なんてどこにも付いてないけどね。たるんでるだけ。でも、これ(刺青)が強さを与えてくれたのかもしれない」
秋山翔吾の復帰戦で“予期せぬノーヒッター”
やがて雨が止み、試合が始まった。パンデミックの影響で現場にいる記者は少なかったけれど、我々日本のメディアがこの試合をカバーする目的は、それがオープン戦で左太腿を傷めて負傷者リスト(IL)に入っていた秋山翔吾外野手にとっての復帰第一戦だったからだ。
今季初の公式戦に9番・左翼で出場した秋山は三回、強い打球を放ったものの、一塁手の正面に飛んで安打にはならず。その後の2打席も凡退した。そういう目線でスコアブックを付けながら、マイリーの投球を追っていくと、遊ゴロ、見逃し三振、三飛、見逃し三振、右飛、遊ゴロ、空振り三振、空振り三振、投ゴロ、二ゴロ、空振り三振、三ゴロ……。
そこでようやく気がついた。「完全試合=Perfect Gameやん!」と。
それまで気が付かなかったのは、秋山に注目していたからではなく、ある種の偏見があったからだろう。2008年のドラフト1巡目(全体43位)指名でダイヤモンドバックス入りし、MLB2年目の2012年に自己最多の16勝を挙げてオールスターゲームに選出され、新人王投票で次点に入って以来、専門誌などで「先発ローテの4、5番手」という評価が定着してしまったマイリーに対し、「まさかノーヒッターなんてね」と夢にも思わなかったのだ。
インディアンスがハマった“クセの強い投球”
ただし、マイリーはピッチングのクセが強い。MLB公式分析サイトの『STATCAST』によると、全投球の49.3%がカット・ファストボール、約32%がチェンジアップ、13.3%が普通のファストボール=4シーム、カーブやシンカーが5.1%という「変化球主体」で、日本でならきっと、「軟投派」と呼ばれるだろう。インディアンスは打たせて取るマイリーの術中にハマり、強い打球=打球の飛び出し速度が100マイル(161キロ)を超えたのも、たったの一度だけだった。