ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
ブームを超え、成熟したゴルフ人気を!
松山英樹に求められる圧倒的な強さ。
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2013/05/21 12:10
日本プロゴルフ選手権、大勢の報道陣を引き連れてラウンドする松山英樹。惜しくも日本人史上最速のメジャー制覇は逃したが、プロ転向後の4戦で10位、優勝、2位、2位と好調を続け、賞金ランキングトップを走っている。
「このツアーには、絶対的に強い選手が必要。それは外国人でも構わない。みんなが寄ってたかって『倒そう』と思える圧倒的な力を持った選手が」
昨年初めて日本ツアーの賞金王となった藤田寛之がそんな風に声を大にしていたのが、ちょうど1年前のこと。
当時の藤田はシーズン序盤戦に2勝を挙げたところで、既に賞金レースを引っ張る存在だっただけに「あなたがそうなる気はないのか」なんて思っていたものだが、いよいよそんな期待を背負っていきそうな若きプレーヤーが今、目の前にいる。
もちろん、松山英樹のことである。
プロ転向後2戦目での優勝も、なんだか遠い過去の話のよう。続く2試合でいずれも惜敗の2位フィニッシュと常に戦いの中心であり続けているのだから、目が離せなくなるのも当然だろう。72ホール目まで勝敗がどう転ぶか分からない――そんな緊張感溢れるプレーを毎試合展開しているのだ。
ゴルフ界にとっては超新星とも言える松山なのだが、その計り知れない周囲の期待は、一般にどこまで浸透しているのだろうか?
ゴルフ中継の視聴率が低迷する理由は……。
男子ツアーの年間入場者数は、計60万7309人を記録した2010年シーズンを頂点として、ここ最近減少に歯止めがかかっていない。それはここまで4試合を消化した今シーズンも同様で、いずれの大会も昨年実績を下回ってしまった。
テレビの視聴率においてもギリギリの戦いが続いている。
昨年でいえば、石川遼が勝った三井住友VISA太平洋マスターズ最終日に10.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録したが、2009年は日本オープンでゴルフ中継で歴代5位の高視聴率となる16.1%をマークしていたことを考えると、「2ケタが出るか、出ないか」と毎試合心配している昨今の低迷ぶりは、惨状と言っていいのかもしれない。
もちろん、視聴率低迷の理由にはテレビ業界を取り巻く環境の変化もある。某局プロデューサーの話。
「3、4年前までは週末、男女の両ツアーで合計15%を取り合うような構造でした。ところが、ここ数年は週末にテレビを観る人の数自体が減り、のべ10%強というところ。外出する機会が増え、テレビ離れも影響していると思います」
経済状況や、ネットメディアの発達も無関係でないと指摘する声もある。
とはいえ、'10年をピークとした数年間の盛況ぶりは、石川遼人気の産物、という見方が妥当なのだろう。