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岩佐亮佑が“ボクシング人生最大”の敵地戦で痛恨の敗戦 「アウェーに慣れて、アウェーを忘れてしまった」
posted2021/04/05 17:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
AFLO
侍スピリット及ばず――。3日(日本時間4日)、ウズベキスタンのタシケントで行われたWBAスーパー&IBF世界スーパー・バンタム級タイトルマッチで、敵地に乗り込んだ元IBF同級王者で現暫定王者の岩佐亮佑(セレス)は2冠王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)に5回1分30秒TKO負け。IBF王座の統一、そしてWBAスーパー王座の獲得はならなかった。
元王者の岩佐と初防衛戦を迎えるアフマダリエフの新旧王者対決。海外のブックメーカーは凱旋防衛戦のアフマダリエフに有利なオッズをつけていた。その根拠は、アフマダリエフがアマチュアで300勝15敗、リオデジャネイロ五輪銅メダリストであること、わずかプロ8戦目(6KO)で世界タイトルを獲得したことにあるだろう。一方で、戴冠した2020年1月のダニエル・ローマン(米)戦は2-1判定勝ち。ツボにはまれば強さを発揮するが、まだまだ“試されていない”チャンピオンとも言えた。
対する岩佐は身長とリーチで上回り、スピードとテクニックでは五輪銅メダリストに劣っているとは思えなかった。ここ数年は弱点だったフィジカルの弱さの克服に努め、19年2月のIBF同級挑戦者決定戦、そして同年12月のIBF暫定王座決定戦といずれもタフな試合を乗り越えていた。
完全アウェーのウズベキスタンでも
高校3冠の実績をひっさげてプロ入りし、センスを全面に押し出して戦っていた岩佐は起伏に富んだキャリアをへて、心身ともにたくましさを蓄えていたのだ。伸ばした髪を頭上で束ね、袴をイメージしたガウンをまとう岩佐の姿は本当に侍のよう。完全アウェーのウズベキスタンでも「やってくれるのではないか」という期待があった。
しかし、蓋を開けてみればパワフルなアフマダリエフに岩佐は崩され、「ボクシング人生最大の大一番」と位置づけた試合を落としてしまった。まずは試合を振り返ろう。