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岩佐亮佑が“ボクシング人生最大”の敵地戦で痛恨の敗戦 「アウェーに慣れて、アウェーを忘れてしまった」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byAFLO
posted2021/04/05 17:00
岩佐亮佑(左)はウズベキスタンのムロジョン・アフマダリエフにTKO負けを喫した
ハイリスク・ハイリターン完全アウェー戦で
相手はもともと苦手だったサウスポーであり(試合前時点での3敗はすべてサウスポーだ)、パワフルに前に出るタイプも決して得意とは言えなかった。ましてや試合は相手のホームという完全アウェー。近年は海外で試合をする日本人世界王者も増えてきたとはいえ、それは第3国であることが多く、相手のホームで勝利したケースは決して多くない。もともと今回の試合はマイナス要因の多いハードなチャレンジだった。
それでも岩佐は自ら望んでこの試合に挑んだ。この数年で悔しい敗北も、勝手の違う海外での試合も経験し、フィジカルを強化して大きな成長を遂げたという確かな自信があった。しかもこの試合に勝てばIBFの正規王者になるだけでなく、WBAのスーパー王座も手に入る。2冠王者となればこのクラスで無視できない存在となり、他団体王者との統一戦やビッグネームとの試合も見えてくるはずだ。ハイリスク・ハイリターン。侍はハイリターンにかけていた。
岩佐は元IBF世界同級チャンピオンであり、今や世界王者になるだけが目標ではない。さらなる高みを目指し、その先まで見据えてのチャレンジが今回の試合だったのだが、この敗北で目標からはっきりと遠のいてしまったのは痛い。プロ13年目の31歳は敗戦後、「少し休みます」というコメントを残した。