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「山はお金がかからない」“サバイバル登山家”になって22年…なぜ服部文祥は廃村暮らし(電気なし、ガスなし、水道なし)を選んだか
text by
稲泉連Ren Inaizumi
photograph byNanae Suzuki
posted2021/04/10 17:01
服部文祥さんと愛犬ナツ
本来、生きることに金はかからない。街というのは、仕事をして稼いで、金を使って便利な生活をして、空いた時間を利用して何かをするためのシステムだと俺は思うのだけれど、次第に金を稼ぐこと自体が「生活」の目的になってしまうところがあるでしょ。
山登りを長く続けていると、金を稼ぐことが生きる目的ではないと実感できる。山では全てがタダだし、そもそも金は使い道がないからね。だから、光熱費や上下水道の使用料を払っている都市での生活に、「何か違うな」という思いがずっとあった。
「サバイバル登山」もそのなかで生きる意味を考えていったとき、「自力」でそこに存在し続けることだ、と思ったところから始まった。その意味では横浜での生活では様々な限界があるから、より「自力」で生きるために電気、ガス、水道というライフラインの束縛から離れてみたかったんだ。
そういえばこの前、新聞社の知人にこう言われたな。「そういう生活には憧れがあるけれど、服部さんを見ていると自分の代わりにそれを試しにやってもらっているような気持になる」って。
小蕗での「生活」では登山や狩猟みたいなアドレナリンは出ないから、「俺は生きてるぞ」という瞬間はない。でも、それはこれまで達成感や興奮に「生きている瞬間」の実感を求めてきた俺にとっては、全く別の形で「生きる意味」を考える一つの試みでもあるのだと思うんだ。
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