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センバツでなぜ「異例のサプライズ先発」続く? “2戦連続”の東海大相模監督は「夏まで実戦練習ができなかったから」
posted2021/03/26 16:35
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
KYODO
サプライズ合戦となった。
この日の第一試合は、東海大相模の先発・求(もとめ)航太郎も、鳥取城北の先発・山内龍亜も、いずれも公式戦初先発。求は新2年生で、昨秋はベンチにさえ入っていなかった。
鳥取城北の監督、山木博之は、山内起用の意図をこう語る。
「冬の間、すごく前向きに練習に取り組んでくれて、春の練習試合でもよかった。(公式戦は)ほとんど投げていないので、相手もわからない。どこかで行かせたいな、と思っていた。最終的に決めたのは昨日。早ければ2回、3回ぐらいかなと思っていたのですが、こちらがびっくりするくらい投げてくれました」
山内は、183センチの長身から投げ下ろす100キロ台の緩い変化球を有効に使い、8回をわずか1失点で切り抜けた。
2連続「サプライズ起用」で「1週間500球も気にならない」
対する東海大相模は、1回戦の東海大甲府戦でも、昨秋メンバー外だった石川永稀を先発させ、周囲をアッと言わせたばかり。2試合続けてのサプライズ起用を決断した理由を監督の門馬敬治はこう話す。
「ここ数日、状態がよかった。昨日、シートバッティングで放らせたら、ボールの質がとてもよかったものですから思い切って起用しました。初めての公式戦で、4回無失点ですから、いいんでしょうけど、彼本来の真っ直ぐはこんなものではない」
東海大相模は求のあとをエースの石田隼都がつなぎ、2人で完封リレー。1−0で接戦を制し、ベスト8入りを果たした。
ここから、各チームとも主戦投手の「1週間で500球」という制限が気になるところだが、1、2回戦ともにリリーフに回ったエースの石田は2試合で、まだ計122球しか投げていない。門馬が言う。
「制限をオーバーすることは考えにくい。なので、球数は関係なく、相手を見ながら、自分たちを見ながら、ベストのピッチャーを起用したいと思っています。まだ、他にもピッチャーはいますから」
「最初は方言で困りました」
山内と求には、こんな偶然の一致もあった。山内は沖縄出身、求は奄美出身と、いずれも「島んちゅ」なのだ。山内は、こう声を弾ませた。