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“予定通り”天皇杯を制覇…新生・川崎ブレイブサンダースの土台が固まった「甘い蜜の味を知れたからこそ…」
posted2021/03/19 17:01
text by
青木美帆Miho Awokie
photograph by
JBA
3月13日、14時。さいたまスーパーアリーナで川崎ブレイブサンダースと宇都宮ブレックスの天皇杯決勝が始まったその頃、川崎市内に大きな雷鳴が轟いた。
その後も2時間近く鳴り続けた雷は、はたとやんだ。そして、それから程ないタイミングで試合が終わった。最終スコアは76-60。川崎は7年ぶりの天皇杯優勝、そしてBリーグ開幕以来初の日本一を達成した。
優勝後の取材対応を終え、チームがホームタウンに向かおうとしている頃、その街の空は、彼らを祝福するかのように大きな二重の虹をかけていた。
拮抗した力のぶつかり合いで、勝負を最後に分けるものは、ほんの些細な運。そういう意味で前述の雷(言うまでもないが、川崎ブレイブ“サンダース”の重要なアイコン)はこの日の川崎の「ツキ」を象徴していたとも言えるのだが、実は「ツキ」を象徴するものがもう1つある。
前日の準決勝後、キャプテン篠山竜青は無作為のドーピング検査後、報道陣に「最後に優勝したNBL(旧リーグ)時代のラストシーズン、ファイナルの期間中にドーピング検査を引き当ててるんです」と明かした。
「今日またしっかり引き当てたので、何かあるんじゃないかと思います」と続けた篠山は、自身が経験した5年前のジンクスの匂いをしっかりと嗅ぎ取っていたのだ。
さて、ここからは運でなく、川崎が天皇杯に向けて構築してきた地力のことを紹介しよう。
天皇杯制覇は、はじめからスケジュールされていた
ファイナルラウンドが従来の1月開催から3月にスライドされたことで、天皇杯はかつてより難しい大会になった。折しも、レギュラーシーズン終盤戦に向けて星勘定があわただしくなる時期。天皇杯を本気で目指すか、レギュラーシーズンに集中するか――多くのチームが判断に悩んだと想像するが、川崎はシーズン当初から明確に「天皇杯を獲る」という意志を固めていた。
昨季から川崎のヘッドコーチに就任した佐藤賢次は、シーズン前に細かな年間スケジュールを組んでいる。篠山によると、現在は年間計画のうちのサードフェーズにあたる時期で、このフェーズのゴールに設定されていたのが、天皇杯ファイナルラウンドに進出し、準決勝、決勝を勝つことだった。
選手たちは早くから天皇杯を見据えたコンディショニングを意識し、直近のレギュラーゲームを、勝利を前提としつつ“天皇杯に向けた準備”ととらえて戦ってきた。篠山は準決勝後「ファイナルラウンド前の10試合で9勝1敗と、勝率が上がってきている手応えがあったので、『あとはみんなで準備したものを出すだけ』と、はっきりした状態で臨めています」と話していた。