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「四股が踏めない」鶴竜の今後は? 春場所「本命」は36歳白鵬か…「対抗」は“3人の大関”よりも“復活劇”狙う照ノ富士?
posted2021/03/14 11:00
text by
荒井太郎Taro Arai
photograph by
KYODO
今場所こそは両横綱が揃って本場所の土俵に帰ってくると思われていたところへ残念なニュースが飛び込んできた。横綱鶴竜が今月9日の稽古で左太ももを負傷し、師匠の陸奥親方(元大関霧島)によれば「四股が踏めない状態」だという。昨年7月場所以来、休場が続く鶴竜は11月場所後の横綱審議委員会で引退勧告の次に重い「注意」を決議されたが、翌初場所は持病の腰痛が回復せずに全休。この春場所は進退を懸けて臨むはずだった。2月に行われた合同稽古では実力者の御嶽海と2日間で30番取って全勝と気を吐くなど、今場所の出場をキッパリ明言していた。
それだけに無念さもうかがえる。師匠からは進退について言及されたが本人は現役続行の強い意志を示したという。このままフェードアウトする形で土俵を去ることに気持ちの踏ん切りがつかないのだろうと想像するが、今回のケガは突発的なものだったとしてもこれだけケガが重なったり、回復が遅れること自体、体力の限界が差し迫っている証左でもある。横審からはさらに厳しい見解が示される可能性が出てきた。
休場明け“アラフォー”横綱、45度目優勝を狙う
もう1人の横綱の白鵬は4場所連続休場明けの今場所に意欲的である。先場所は新型コロナウイルス感染で無念の全休も2月の合同稽古では健在ぶりを見せつけた。奇しくも東日本大震災が起きた“3.11”が誕生日の白鵬は場所直前に36歳となった。10年前から角界第一人者にとってこの日は自身のバースデー以上の意味を持つようになり、自らもそのことを「宿命」と表現し復興支援に尽力してきた。
あれから10年経った今も番付の頂点に君臨し続け、魁皇に次ぐ史上2人目の幕内在位100場所目となる今場所も「春場所連覇を目指す」と1年ぶり45度目の優勝を視野に入れる。それだけ仕上がりも順調に来ているということだろう。
いくら史上断トツの優勝回数を誇るとは言え、長期休場明けの“アラフォー”横綱に易々と賜盃をさらわれては大関陣も立つ瀬がないが、優勝争いはやはり白鵬を中心に回っていくのではないだろうか。昨今の休場の多さに是非はあるが、直近5回の休場明け場所のうち4回で優勝。残りの1回も千秋楽まで優勝の可能性を残すなど、出場する場所は万全に近い状態で臨めるからなのか、しっかり結果を残している。
貴景勝、朝乃山、正代…大関陣に足りないものは?
横綱不在中、大関陣は優勝争いには絡んでいたものの賜盃を抱いたのは11月場所の貴景勝のみであり、その貴景勝も綱取りから一転、今場所はカド番の窮地に立たされるなど、絶対的な存在となる大関は現れていない。朝乃山は大関在位4場所中、3場所で2桁勝ち星を挙げるなど、それなりの安定感はあるものの大関初優勝には手が届きそうで届かないでいる。