相撲春秋BACK NUMBER
大相撲の“3.11” 被災地を訪れた力士たちの涙と誓い
text by
佐藤祥子Shoko Sato
photograph byShoko Sato
posted2021/03/12 17:02
10年前、大相撲の被災地慰問。横綱白鵬の土俵入りも行われた
「有名芸能人やスポーツ選手が慰問に来て下さいましたが、年代によっては誰だかわからないんです。でも、お相撲さんは一目見てわかるし、何より今日はお年寄りや子どもたちが本当に喜んでいる。これは力士の方々でなければできないことでしょう。市民の皆さんの笑顔の時間が少しでも長くなれば、復興への力ともなるんです。本当に感謝です……」
そう言って目を赤くしていたものだった。移動バスの車窓から、時には高台の小学校の校庭から、いまだ爪痕の深い被災地の光景を目にし、しばし息を飲み、手を合わせ、涙ぐむ力士も数多いた。闘う男たちは、言葉にならない思いを胸に秘め、けして土俵上では見せない笑顔に変えて、被災者とふれ合っていたのだった。
白鵬「大相撲は日本とともにあると感じました」
各地で大歓声で歓迎された一行だったが、横綱白鵬の渾身の土俵入りでは、一転、シーンと水を打ったように静まり、誰もが息をひそめて食い入るように見つめていた。