2020年M-1・全員インタビューBACK NUMBER
「アキナやからし蓮根なんて女子アナと結婚してるんすよ」“東京芸人”ウエストランドが語るM-1「悪口ネタ」の原点
posted2021/03/14 11:01
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Shigeki Yamamoto
笑神籤(えみくじ)でずっと待たされ、最終10組目に登場したウエストランド。9位に終わったものの「お笑いは復讐劇なんだよ」という毒フレーズで爪痕を残した。「傷つけないお笑い」の時代とも言われるなか、彼らの“卑屈さ”の根っこにあるものとは?(全3回の1回目/#2、#3へ)
――今大会、井口さんの「毒フレーズ」が話題になりました。いくつかあった中で、もっとも好評だったのが「お笑いは今まで何もいいことがなかったヤツの復讐劇なんだよ」というセリフでした。2回戦の時からずっと言っていましたよね。
井口 あれ、何年か前のネタの中にあったフレーズで、2回戦で使ったあと、ネットでボロクソ叩かれるんじゃないかと心配だったんです。けど、意外といい反応が多くて。それで準々決勝以降も使うことにしたんです。
――ああいうセリフを使うのは、やはり怖いんですね。
井口 僕、怒られるのがとにかく嫌なんです。2012年に『THE MANZAI』の本戦サーキットに進んだあたりから、ちょこちょこテレビに出させてもらうようになったんですけど、何をやっても叩かれるんで。殺害予告がきたこともありますし、何千件の批判コメントがついたこともある。だから今回は、世の中、捨てたもんじゃないなと思いましたね。
関西の芸人は女子アナと結婚してるんですよ
――あのセリフは、東京の芸人の感覚でないと出てこないですよね。関西だと、むしろクラスの人気者がお笑いの道に進む傾向が強いですから。
井口 そうでしょうね。それに対するムカツキでもあったんですよ。関西でお笑いやってる人たちは、それまでもピラミッドの一番上にいた人たちなんですよ。スター街道を歩んできているので、キラキラしている。アキナの秋山(賢太)さんとか、からし蓮根の伊織君なんて、女子アナと結婚してるんですよ。東京の若手芸人だったら、そんなの考えられないじゃないですか。僕らは2人とも岡山出身なんですけど、あのキラキラ感が怖くて、東京に逃げてきたというのもある。東京吉本も似た雰囲気があるので避けました。あの感じは無理だな、と。それでタイタンに入ったんです。
「学生時代付き合ったことないヤツしかお笑いやるな!」
――関西の芸人には、浅草芸人のような卑屈さや悲しさがほとんどないですもんね。そういう面も愛おしく思えるのですが。