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ジュリアの“髪切り”が目立ったが…「輝いていて美しい」林下詩美22歳vs上谷沙弥24歳にスターダムの未来が見えた
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byMasashi Hara
posted2021/03/09 11:02
赤いベルトをかけた戦いはトリを飾ることはできなかったが、スターダムの女王の座にふさわしい名勝負となった
敗れた上谷は泣きながら
「常に堂々としていて余裕のある立ち居振る舞いを見せたいです。強さ、貫禄、存在感の大きさを意識しています」
試合前に語っていたチャンピオン像そのものの試合だったと言っていいだろう。ちなみにツイッターのプロフィールにある林下のモットーは「クールにロイヤル美しく」。女子プロレスを広めたい、特に女性ファン、若い観客を増やしたいという意識が強い。
だから「女性から見てカッコいい存在、林下詩美みたいになりたいと思われる選手になりたい」と言う。ジャニーズのグループSnow Manの宮舘涼太のキャラクター(セクシーロイヤル美しく)も参考にしている。曰く「私から見てカッコいいということは、女性から見てカッコいいということだと思うので」。
敗れた上谷は泣きながらこう語った。
「いま自分が持っている技、すべての力を出し切ったつもりです。それを全部、受け切ってもらった上ではね返されました」
「私と上谷で今のスターダムを見せたかった」
結果として、林下はビッグマッチ仕様の“秘策”“新技”を使わなかった。
「今日はいろんな試合があって、その中でスターダム生え抜きの所属同士がベルトをかけて闘うのは私たちだけだったんです。私は私らしく、上谷は上谷らしく、今の自分を出し切れたのかなと。私と上谷で今のスターダムを見せたかったし、それは存分にできたと思ってます。輝いていて美しくて強い。それが私が思うスターダムです」
林下にとってのスターダムらしいプロレスは、同時に“奇をてらわないプロレスらしいプロレス”に思える。強くて美しく、風格のある試合ぶりはチャンピオンらしさを体現するものでもある。