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〈セナ事故死から27年〉「弟は真剣にF1をやめるつもりでした」実姉が明かすセナとホンダの“知られざる関係”と日本への愛
text by
リビオ・オリッキオLivio Oricchio
photograph byJIJI PRESS
posted2021/05/01 06:02
本田宗一郎氏(左)と肩をくむアイルトン・セナ
なぜ弟は日本と日本人を愛したのか
「アイルトンの机の上には、2枚の写真が飾られています。1枚はアルゼンチンのファン・マヌエル・ファンジオ('50年代に5度チャンピオンに輝いた伝説のドライバー)と抱き合っている写真。そして、もう1枚は本田宗一郎さんと一緒に写っている写真です。弟は宗一郎さんについて書かれた本もよく読んでいました」
あれから26年が経ったいまも、ビビアーニは鈴鹿を訪れた日のことを時々、思い出すという。
「日本にはそれ以前にも行ったことがありましたが、鈴鹿はあのときが初めてでした。アイルトンが鈴鹿と日本人を愛していたことは知っていましたが、本当の意味ではその理由までわかっていませんでした。でも、鈴鹿に招待され、多くの日本のスタッフとお会いし、大勢のファンと接して、弟がなぜ日本と日本人を愛していたのかが明らかになりました。アイルトンと日本人の価値観は非常に似ているんです。だから、あの旅によって、私は喪失感を乗り越えることができたのです」
セナの死後、その遺志を引き継ぎ設立されたアイルトン・セナ財団。ビビアーニはその代表として、自らの役割を全力で果たそうと、いまなお努力を続けている。
(尾張正博=翻訳)
ビビアーニ・セナVIVIANE SENNA
1958年、ブラジル生まれ。アイルトンの実姉。'94年設立の「アイルトン・セナ財団」代表。長男のブルーノはロータスやウイリアムズなどをドライブした。