濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
“日本一の美女レスラー”から東京女子プロレスの顔に 上福ゆきがリングで掴んだ「六本木ではできない経験」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by東京女子プロレス
posted2021/02/18 11:01
上福ゆきは他の女子レスラーとは一味違ったスタイルでプロレスファンを魅了している
楽しんでいるだけでは本当には楽しくない
東京女子プロレスには、デビューしてから“プロレスに目覚める”選手が少なくない。最初は教わった技を頑張って出していれば拍手が来る。負けても「楽しんでもらえたなら」という充実感がある。ただいつか「このまま負け続けていいんだろうか」、「もっと強くなりたい。私だって勝ちたい」と思う時がくる。プロレスは、楽しんでいるだけでは本当には楽しくないのだ、と。
「女子プロレスという山の登り方、登頂ルートはたくさんあっていいと思うんです。登り始めてから“今の体力では上に行けない”“この装備ではダメだ”と気づいて、いったん下山してもいい。昔のプロレス界は、頂上まで行けるポテンシャルを認められた人間しか入山できなかった。でも山登り自体は誰がやってもいいはず」(東京女子プロレス事業部長の甲田哲也)
“やめればいいのに”って言われて
上福もまた、闘う中で気づくものがあった。
「どうせ練習してるんだから勝ったほうがいいなって。闘いは闘いなんだし。お客さんに“なんであんな技ができないの”とか“やめればいいのに”って言われて悔しかったこともあるし、妹気質だから褒められると嬉しいし(笑)。先輩たちの自慢の後輩でいたいっていうのもありますね。
ゆきは、ただデビューしただけで“私プロレスラーです”みたいな顔をするのが嫌だったんですよ。グラビアでもDVD1枚だして“芸能人です”っていうのが嫌いで。だから自分が“勝ちたい、頑張りたい”って言うのはふさわしくないんじゃないかと思ってたかもしれない。そういう性格なんで(笑)。
でも東京女子に貢献しようと思ったら目立つ位置にいないと。そのためには力をつけて勝つ必要があるなって。ベルトだってあったほうがいい」