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なおみテニスの真髄…元世界1位相手に“崖っ縁から15分での大逆転” 直感型の大坂にデータ処理能力も宿った理由
posted2021/02/15 17:02
text by
山口奈緒美Naomi Yamaguchi
photograph by
Hiromasa Mano
昨年のツアー再開から18試合目、初めて握られるマッチポイントだった。そしてそこからの15分間に、大坂なおみのテニスの神髄を見た。
2016年の全仏オープンと翌17年ウィンブルドンのチャンピオンで、その後世界1位に上り詰めたガルビネ・ムグルサとの初対戦。今大会4回戦の女子8試合の中で唯一の世界1位経験者同士の対戦、そしてグランドスラム・タイトルの複数保持者同士の対戦だ。
我慢がキレたかと思ったが
第1セットをムグルサ、第2セットを大坂がブレークダウンから奪い返して迎えた最終セット、第5ゲームで先にブレークしたのはムグルサ。大坂は15-15でチャンスボールをミスし、15-40で地面にラケットをぶつけ、最後はダブルフォルト。とうとう我慢がキレたゲームだった――が、そう単純な“キレ方”ではなかった。
「試合を通してちょっといろいろ考えすぎていたところがあったけど、余計な考えが吹っ切れた感じだった。あのあとは直感をベースにプレーするようになったと思う」
崖っ縁に立たされてスイッチが入った
それでもすぐに流れが変わったわけではない。第8ゲームで握ったブレークポイントはサービスエースでかわされ、3-5で迎えた次のサービスゲームで15-40の崖っ縁に立たされた。ここからだ。本当の意味で大坂にスイッチが入ったのは。
エースで1つしのぐ。次は、セカンドサーブからのラリーでムグルサの強烈なショットに攻められながら最後はミスを誘った。
追い込まれれば大坂のショットはより深く、鋭くなり、ますます落ち着きを増していく。追い詰めた者と追い詰められた者が、まるで逆のように見えた。第10ゲームでデュースから連続のウィナーでついに5-5に追いつくと、危なげなくキープして6-5。スコアはまだイーブンでも完全に優位に立った大坂が、最後はラブゲームのブレークで1時間55分の試合を締めくくった。