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“アリを倒した男”レオン・スピンクス逝く…大仁田厚と金網デスマッチ、酒&薬物にも溺れた数奇な人生
text by
高木圭介Keisuke Takagi
photograph byAP/AFLO
posted2021/02/13 17:01
1978年2月15日、モハメド・アリに判定勝ちを収めてWBA、WBC統一世界ヘビー級王者を獲得したレオン・スピンクス
当時のUFCは、まだ総合格闘技(MMAという名称はまだ使われていない)というよりは、「ケンカ世界一決定戦」みたいな様相で、全米各州のアスレチックコミッションから興行開催許可が下りず、コロラド州デンバーとか、ノースカロライナ州シャーロット、オクラホマ州タルサとか、かなりローカルな場所で開催されるのが常だった。
スピンクスもそんな大会の「箔付け」として、主催者(当時はSEG社)から招待されてのキャスパー入りだったはずだが、大会当日、会場で紹介されたかどうかの記憶は定かでない。当時まだ42歳になったばかりだから、ファイターとしてUFC出場オファーもあったはずなのだが、その後、何の進展もなかったところを見ると、話は流れたということだろう。
スピンクスは同年12月にボクシングの試合で現役引退。その後の私生活でもトラブル続きだった模様だが、約四半世紀を生き抜いて天に召されたということだ。
「アリに勝った男」の栄冠はほんの一瞬。その後の人生が苦難の連続だったことも想像がつく。しかし、FMWの巡業にて、異種格闘技戦や異種格闘技タッグマッチなどを戦い、外国人用の移動バスにて、他の選手たちと一緒に旅をしているスピンクスの姿は、どこか楽しそうにも見えたものだ。ほんのわずかな接点だったが、あの時代に「それからのスピンクス」を目撃できたのは貴重な体験だった。合掌。