窪田　色々伺いましたが、人間同士の勝負を皮膚感覚で伝授された気がします。「一局の流れが大事だ」「流れを断ち切って、次の一手を考えるのも重要だ」。単純に考えると矛盾しているようですが、そうではありません。一手一手を断ち切れば、流れにとらわれない新たな発想が生まれてくる。とはいえ、人間は流れを掬って、それに乗っていくほうがパフォーマンスを発揮しやすい。そういう意味でしょう。

――窪田七段は振り飛車党ですが、かなり独特な棋風だと思います。振り飛車といえば軽くさばく、または厚みで押し切るのが一般的でしょう。しかし、窪田振り飛車は金銀の分裂や玉の露出をいとわず、崩壊しかねない陣形を力ずくでまとめるイメージです。

窪田　実戦的な振り飛車です。もちろん軽いさばきや厚みも好きなんですけど、なんだかんだで受け身に回りやすいですね。戦法で影響を受けたのは藤井猛九段の四間飛車藤井システム、佐藤康光九段のダイレクト向かい飛車です。修業時代は大山康晴十五世名人、森安秀光九段の将棋に基本を学びました。

　菅井君（竜也八段。王位1期、現A級棋士）の振り飛車は参考になります。こんな指し回しでいいのかなーと思うけど、しっかりまとめるじゃないですか。実戦的で、勝ちやすさの要点をつかんでいるんですよ。藤井菅井戦は好勝負になっている印象です。

――最後に藤井戦の抱負をお願いします。

©Tomosuke Imai

窪田　先手番なので主導権を握りたいです。ただ、実際は悪戦苦闘するかなと思います。そのなかで最善を追求して、自分のよさが出て、何とか抜け出していければと思うのですが。息長く指すなかで、勝機をつかむつもりであります。当日まで、しっかり作戦を練りたいと思います。

(【前編を読む】「あー、きたか」藤井聡太二冠との初対局を前に 48歳中堅棋士が語った“義務意識”「恥ずかしくない将棋を…」　へ)