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「藤井聡太二冠戦は悪戦苦闘でしょう」窪田七段が振り返る28年間の順位戦<渡辺明竜王『バッカすぎる』発言とは…>
text by
小島渉Wataru Kojima
photograph byKYODO/Imai Tomosuke
posted2021/02/08 17:02
2月9日のB級2組順位戦で対局する窪田義行七段と藤井聡太二冠
窪田 自分は現状維持が続いています。降級点がついても消せるかなと思っていましたが、最近はきつい。というわけで、降級点は取らないようにという当たり前の結論に落ち着くわけです(笑)。
B級2組のメンバーを見ると、世代交代を感じます。新陳代謝がちゃんと行われていれば、若手が増えるのは当然です。若手は登り調子だし、上のクラスから落ちてきた棋士も全盛期ではないとはいえ、私が見ていない世界を見てきたわけですから、その差が勝負にどう影響するかだと思います。
――第74期(2015年度)は、3連勝中の糸谷哲郎竜王を止めます。最終的な結果は糸谷昇級となったものの、あとひとつ負けていると昇級失敗でした。窪田七段は4勝6敗で、糸谷戦に敗れていると2つめの降級点がついて、C級1組に陥落するところでした。
窪田 タイトルホルダーと当たると、棋士として名をあげようと特別な気持ちがわきます。意地が空回りしてしまうこともありますけど、それがないと勝負師として枯れてしまいますから。精神的要素を足していかないといけません。まあ、藤井君はプライドとか感じることなく、盤上に打ち込めているんでしょうけど。
「東海の鬼」師匠に言われたこと
――窪田七段の今期順位戦の戦いぶりを見ると、長手数の将棋が多いです。昨年12月の8回戦、藤井二冠の師匠、杉本昌隆八段との勝負は特に激戦でした。朝10時に始まって22時前に千日手になり、指し直し局は午前2時過ぎに窪田七段が164手で制しました。長手数は自分の土俵ですか?
窪田 そうですね。自分は長い戦いの逆転技が頼みのひとつでした。ただ、近年は粘っても報われず、100手行く前に大勢が決することも多くなっています。序盤から差をつけられないようにするため、時間を使うことが増えてきました。読む材料を広げて精度を上げるのが理想ですが、研究していても対局中に新たな考えが浮かんで迷います。自分がこう指すべきだという手と常識の手、そこの選択をうまくできてない気がします。どちらを選ぶにしろ、ちゃんと決断して後悔しないように指さないといけません。
――師匠の花村元司九段は元真剣師で、「東海の鬼」と恐れられました。窪田七段の奨励会入会から1年ほどで亡くなられましたが、何か師匠にいわれたことはありますか。