スポーツ名言セレクションBACK NUMBER
【誕生日】佐藤琢磨、“賛否両論のアタック”も「あのチャンスは行くしかない」 44歳で世界トップを走れる理由
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/01/28 17:00
F1でもインディでも結果を残し続けた佐藤琢磨。日本が世界に誇る、名レーサーである
<名言5>
あのチャンスは、行くしかなかった。
(佐藤琢磨/NumberWeb 2017年6月9日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/828225
◇解説◇
世界三大レースのうちの1つである、インディ500制覇――。
佐藤琢磨がとんでもない偉業を成し遂げたのは、2017年5月28日のこと。F1モナコGP、ル・マン24時間レース、そしてインディ500は、その過酷さゆえに最大の栄誉を称えられるレースだ。その舞台で琢磨は200周のデッドヒートを制し、日本人ドライバーとして初優勝を飾った。
2010年にインディカー参戦している琢磨だが、実は2012年にも優勝へあと一歩まで迫っていた。レース終盤2位まで浮上した琢磨は、最終ラップの第1コーナーで勝負をかける。トップのダリオ・フランキッティのインに飛び込んだのだ。
オーバーテイクが成功した――かと思った直後、琢磨はスピン。結果、優勝はフランキッティ、琢磨はリタイアとなった。
レース直後、現地でもそのアタック自体に賛否両論があったという。しかしこれは、琢磨のモットーである「アタックなくして、成功なし」を体現したものだった。
<名言6>
正直、僕はまだ2回勝ったことの本当の価値を理解しきれていないと思う。ここから何年、何十年も経ってわかるのかもしれないけど、今はまだ現役のいちレーサーだから。
(佐藤琢磨/Number1017号 2020年12月17日発売)
◇解説◇
コロナ禍に揺れた2020年のスポーツ界、数少ない快挙として語り継ぎたいのは、佐藤琢磨の3年ぶり2度目となるインディ500制覇だ。
琢磨らしい積極的なレースで栄冠をつかんだ姿は画面越しでも多くのファンに感動を与えたが、100年を超える歴史において複数回の優勝者は20人しかいないのだから、現地アメリカでもその評価は高いようだ。
「インディアナポリスの空港はもちろん、今回はレースと関係のない空港でも“Two times!”って声をかけられる。テレビでしか見たことない人が多いはずなのに、マスクしていて目の周りしか見えないのに、(最初に優勝した)'17年以上に気づいてくれる」
それでもなお、レーサーとしての欲望は尽きない。「今年(2020年)は無観客だったから、あの30万人の大歓声の中でゴールっていうのを味わってない。(中略)お客さんと一体になってあの興奮を味わいたかった。それって結局、もう一度勝たないと味わえないんだよね」とも語っている。
ファンの前で最高の走りを見せたい。その思いが琢磨を突き動かしているのだ。