武蔵丸の辛口御免 Oh!相撲BACK NUMBER
“ご意見番”武蔵丸、初優勝の大栄翔にあっぱれ 一方で喝も「絶不調の貴景勝は体を絞れ!」
text by
武蔵川光偉Musashigawa Mitsuhide
photograph byKYODO
posted2021/01/26 17:35
初場所千秋楽、隠岐の海(手前)を攻める大栄翔。突き出しで破り、初優勝を果たした
敗因は、まずは立ち合いの体勢が高いこと。自分より体がデカい相手には、胸を合わせちゃダメなんだよ。朝乃山は立ち合いで思い切り当たって相手の上体を起こし、右を差して左上手を取る形が理想なんだけど、ちょっと甘いんだよな。差したまま、ただ寄るだけじゃダメなんだ。相手に逃げられちゃうからね。右を差したら、そこで腕(かいな)を返さないと。そうすれば、照ノ富士みたいな大きい相手でも起こせるし、体を浮かせられるんだ。朝乃山は、腕を返せる力はじゅうぶんに持っている。とにかく稽古場でいろいろ試してやってみなさい! 今はコロナ禍で出稽古もできないけれど、部屋の幕下の若い衆相手でも、1日に5、60番やってスタミナをつけてさ。じゃないと、このまま終わっちゃうよ? せっかくいい体といい素質を持っているんだから、もったいないよ! あと、上手は浅く取ったほうがいい。上手を取る位置が深すぎるんだよな。下手は今まで通りに、おヘソに近い前褌をしっかり取ってね。本当に期待してるんだけど、ちょっと歯がゆいな……。
35歳明瀬山、体はぽよんぽよんしてるけど……
あと、今場所目を見張ったのは明瀬山。初日から6連勝したんだけど、35歳という年齢でありながら、攻める相撲がよかったんだ。前に出て、後ろに下がらないんだよね。なかでもビックリしたのが、栃ノ心を一発でもって行っちゃったこと。体はぽよんぽよんしてるんだけど、力はあるんだよね。
前頭3枚目の期待のホープ、琴勝峰が2勝13敗と振るわなかったけど、21歳と若いのに攻める相撲じゃないんだ。後ろに下がってしまい、ほとんどの相撲で膝が中に入っちゃっているんだよね。これ、ケガにつながって危険なんだよな。身長が191センチもあるから、もうちょっと体重を増やすといい。今、体重は156キロとのことだけど、これだけの身長があれば180キロあってもOK。問題は技術的な細かいことじゃないんだ。自分の体に合った体重がないと、どんどん疲れが出て来てしまうこともある。まだ若いから、これから体を作っていけるよ。
「王鵬はOH!NO!だったね」
そして今場所新十両として土俵に上がった、大鵬さんの孫の王鵬。OH!NO!だったね。5勝10敗と負け越してしまって出直しなんだけど、いい体とイイモノは持ってるんだ。相撲を見ると、腹を出し過ぎなんだよね。体勢が高いの。ぶつかり稽古のイメージで相手に当たっていくのがベストなんだよ。あと、まだまだ手の力がないな。てっぽうの稽古が足りないってこと。そこらへんを磨いていけば、すぐに戻れるし、まだまだ上も狙えるぞ!
今場所、緊急事態宣言も出るなかで観戦してくださったファンの方は、気を遣いながら大変だったと思う。いろいろな意見もあるなか、開催してよかったと僕は思うんだ。でも、ここのところ横綱が休場し、土俵入りがなくて寂しいよね。僕がサービスで横綱土俵入りしたいくらいだよ。太刀持ちと露払いは誰にするかな……。みんな引退してからしぼんじゃってるし。そうだ、今も体が張ってる武双山(藤島親方)と魁皇(浅香山親方)に頼もうかな(笑)。
(構成=佐藤祥子)