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柳田悠岐、栗原陵矢、森唯斗…“ドラ2”が証明するホークスの育成力 「民家の屋根を壊した」193cm新人はどうなる? 

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田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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posted2021/01/15 11:03

柳田悠岐、栗原陵矢、森唯斗…“ドラ2”が証明するホークスの育成力 「民家の屋根を壊した」193cm新人はどうなる?<Number Web> photograph by Kotaro Tajiri

2020年ドラフト2位指名でソフトバンク入りした笹川吉康(横浜商高)

「よく覚えているのは、日大高校のグラウンドでの練習試合で右中間に打ったホームランです。防球ネットがあって、その10mほど奥にも『絶対越えちゃいけない』高さ20mほどのネットがもう一つあるんですけど、それを越えちゃったんです。結局、民家の屋根のソーラーパネルを壊してしまって、学校が入っていた保険で弁償してもらいました」

 そんな驚嘆エピソードに「ほぉほぉ」と頷く報道陣に、笹川はさらにこう続けた。

「普通のホームランじゃつまんないと思うんです。観客の度肝を抜くようなホームランを打ちたいです」

 昨年12月の新入団発表の席上ではボソボソと喋る感じで大人しい性格との印象だったが、囲み取材になると次々と「字になる」逸話を放り込んでくる。取材慣れしてくれば、ファンの興味を惹く言葉も次々と出てきそうだ。プレー以外にも、スターの階段を上っていくには大事な要素となる。

長距離走は苦手だけど……

 彼にとってルーキーイヤーとなる2021年を迎え、1月10日から始まっている新人合同自主トレでもひと際異彩を放っている。プロで使用するバットは34インチ(約86.4cm)の長尺で重さは910グラム。昨今の球界では800グラム台の軽量バットが好まれるが、怪力自慢はこの新しい相棒を使いこなしていくつもりだ。

 ランニングメニューでは視察する首脳陣の前で後れをとり「長距離走は苦手なんです」とバツが悪そうだったが、「バッティングに自信があるので、そっちを見てもらいたかった。今度はその機会があれば」と負けん気をのぞかせた。体力測定では、メディシンボールを背後に投げる距離を測り、柳田の新人時代を上回る記録もマークしたという。

「将来の目標はトリプルスリーです。打つだけの選手ならたくさんいるけど、走るのも(短距離の)スピードには自信がある。そこも生かしていきたい」

 ホークスの外野手はもう何年も大きな補強ポイントでなかったためか、意外と「柳田2世」と呼ばれる若手が多くなかった。或いは初めて誕生した本格的な「柳田2世」だ。この超有望ドラフト2位を、ホークスがどのように育て上げていくのだろうか。

 また楽しみが増えた。

※追記) 期待たっぷりに書き終えて編集部に入稿した後の1月14日、残念なニュースが飛び込んできた。この日の新人合同自主トレの最中に笹川は左足を痛め、筑後市内の病院にて親指の不全骨折と、中指の軽度の骨挫傷と診断されたとのこと。「球団寮に入寮して3日で体重を1キロ増やすことが出来た」と喜んでいた矢先のアクシデントとなってしまったが、今回に限らずプロ野球人生に山あり谷ありは付き物だ。逆境の時こそ、真価が問われる。目の前の瞬間、瞬間を無駄にすることなく、必ずや這い上がってきてほしい。

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