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【春高バレー】お菓子の食べ過ぎで体重100kg超? 東福岡エースの覚醒を信じ続けた仲間たちの“粘り” 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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photograph byYohei Osada/AFLO SPORT

posted2021/01/12 17:02

【春高バレー】お菓子の食べ過ぎで体重100kg超? 東福岡エースの覚醒を信じ続けた仲間たちの“粘り”<Number Web> photograph by Yohei Osada/AFLO SPORT

春高バレーで優勝した東福岡高校のエース柳北悠李(3年)

 バレーボール選手としての素質だけに目を向ければ申し分はない。最高到達点345cmの高さ、パワー、テクニック。荒削りではあるものの将来性も抜群で、日本の将来を背負う選手になり得るポテンシャルを持つ。藤元監督にとっても柳北は何としても育てねばならない存在だった。

 藤元監督は、入学間もない1年時から柳北を試合に出場させて経験を積ませながら、栄養士やトレーナーなど専門家の指導に基づく身体づくりにも重きを置いた。

 だが、どれだけ手をかけ、時間を割いても当の本人には響かない。2年連続センターコートに立てないまま春高を終えても、U18日本代表選手として強化合宿や国際試合に参加しても、戻ってきたら食べたいものを食べ、平然とお菓子に手を出してしまう。

自粛開け、体重はなんと「102kg」に

 あっという間に最終学年となった2020年。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が発令され、完全休校となり部活動もできなかった春先。チームはZoomでのトレーニングやミーティングを欠かさず、来るべきときに備える準備をしてきたが、休校期間が終わると、自己申告では「88kg」だったはずの柳北が102kgになって現れた。これには藤元監督もさすがに呆れ果てた。

「自粛期間中も体重のことをずっと言われていたけれど、周りと比べても自分だけ、だいぶ違う形で合流してしまった」(柳北)

 100kgを超えた甘さにさすがの本人も苦笑いするしかなかったのだろう。

 どれほど能力があろうと、この体重では膝や腰に負担がかかるだけ。適正体重に戻すまでは公式戦どころか練習試合にも出さないと匙を投げかけた藤元監督に代わり、「自分たちがやるしかない」と立ち上がったのは主将の川波虎太郎を中心に3年生たちだった。

 柳北を含めて5名しかいない3年生にとってはこれが最後の1年。ましてや2年生が主軸を担うチームである以上、試合に出れない自分たちの分までチームを引っ張ってほしいという思いもあった。それに勝つためにはエースの柳北の活躍なくしては語れない。

 朝、昼、練習後と柳北のランニングに付き合い、その都度体重も計った。同じ練習をして、食事制限もしているはずなのに顔が丸くなり、体重が増えているのを見るたび「お前何か食ったやろ」とカバンを開けると案の定、中からお菓子が出てくる。

「何やこいつ、って思いました。でも悔しいけれど僕らは試合に出られないから、託すしかない。日本一になるためには絶対あいつの力が必要なので、サポートするのが自分の仕事だ、って思いました」(川波)

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