濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
元“闘うフリーター” 43歳所英男がRIZINで五輪銀メダリストと対戦「デビュー戦だけは僕が勝ちたい」
posted2020/12/29 17:01
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
(C)RIZIN FF
“闘うフリーター”は今年で43歳になった。
魔裟斗、山本“KID”徳郁らが中量級の時代を牽引する中、所英男がホームリングのZSTからHERO'Sに参戦したのは2005年のこと。ブラジルの強豪アレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラを下す大金星を挙げると、選手紹介VTRでのビル清掃のバイト風景、アパートでテイクアウトの弁当を食べる姿が話題になった。
ヘビー級が超人たちの世界とするなら、70kg前後の中量級の選手には“等身大”の魅力があった。所は常に動き回って一本勝ちを狙うファイトスタイルだけでなく、その“普通さ”でも人気を博した。まさにブレイクと言うべき状態だった。
「燃えるものがある。終わった選手感もあったので」
あれから15年が過ぎ、所をフリーターのイメージで見る者は業界にはいない。もう何年も前からジムを経営、つまり指導者であり実業家でもある。ただ、その気さくさと謙虚さは20代の頃からまったく変わらない。
ベテランとなった所に、久しぶりのMMAマッチのオファーが届いた。大晦日の『RIZIN.26』さいたまスーパーアリーナ大会。対戦相手は太田忍、リオ五輪レスリング銀メダリスト(男子グレコローマン59kg級)のプロファイター転向だ。見方によっては、所が“大型新人デビュー戦の相手役”だとも言える。
「この大舞台で凄い選手との試合を組んでもらって、燃えるものがありますね。今の自分をそういうふうに見てくれてたんだと。若干、終わった選手感もあったので(苦笑)」
所がMMAの試合をするのは2017年7月のRIZINさいたまスーパーアリーナ大会、堀口恭司戦以来となる。それからは主にグラップリング団体戦イベント『QUINTET』で闘ってきた。打撃なしの試合で、そのジャンルの最先端を行く選手たちと同じ舞台に上がり、自身の寝技テクニックもアップデートさせている。
『QUINTET』をプロデュースするのは桜庭和志。レジェンドと練習することで得た刺激も大きい。まだ強くなれる。その手応えがあるからMMAへの意欲も衰えない。
「堀口選手とやって(MMAに関しては)ちょっと……となっていた時期もありました。でも今はもう一回やってやろうと。応援してくれている人たちに、RIZINという日本で一番大きい大会で試合してる姿をまた見てほしいというのもありました」