残る松坂世代の“2人”へ贈る言葉とは？

――先日、和田毅投手が久保コーチの引退の知らせを聞いて驚いたと話していました。久保コーチの引退で松坂世代の現役選手は2人に。共に長い間、第一線で活躍してきた仲として、松坂大輔、和田毅にはどんな言葉を贈りたいですか？

　僕の中でこの2人は特別な存在なんですよ。松坂大輔という男は高校野球界をあれだけ引っ張った人で、今でも「怪物」です。和田毅という男は大学時代から野球に対する考え方が1人だけちょっと違っていた。当時（東海大時代）の僕はやりたいことをやりたいようにやって、後先なんか考えていませんでしたから。本当に2人にはいろんなことを勉強させてもらいましたね。

　もう年齢も年齢ですから「引退」はついて回る。周りからは1年でも長くと期待されていると思うので、僕としては1年でも多く「純粋に野球を楽しんで」と言葉をかけたいですね。

日本シリーズでも先発した和田毅　©︎Nanae Suzuki

現役生活に心残りがあるとすれば……

――冒頭で、現役生活でやり残したことはないとおっしゃっていました。改めて伺います、本当に心残りはないですか？

　うーん、本当にないですね。あ、でも1個だけありますね。

――何でしょう？

　もう少しだけ現役を続けて、来年に入団してくる高卒1年目の選手たちに「俺はお前が生まれたときからプロ野球選手だ」と言ってやりたかった（笑）。

――確かに久保コーチがプロ野球に入った2003年生まれの世代ですね（笑）。実現しませんでしたが、コーチとして接することができます。

　そうですね。そんな年が離れた選手たちにどう指導をするか、まだスタイルを確立していないので少し不安もありますが、楽しみでもある。選手たちとコミュニケーションを取りながら決めて行こうかなと思っています。

「練習嫌い」の久保がコーチになる

――ジャイアンツ、ベイスターズ、イーグルスとたくさんの指導者を見て来られたと思います。今、お答えいただくことは難しいと思いますが、現段階ではどんなコーチになりたいと考えていますか？

　あきらめないことを伝えていきたいですね。誰でも必ず挫折しそうになるときがやってくると思いますし、プロの世界ではうまくいかないことの方が多いと思うんです。そういうときに僕自身が支えてもらってきたように、選手たちに寄り添ってあげられる存在になりたいですね。 まずは選手が思っていることを最優先に考えてあげる。こっちからこうしなさいと言うのではなく、まず大事にしたいのは選手自身がどんな選手になりたいとか、どんなピッチングをしたいか。そこをベースにアドバイスができたらいい。いろんな引き出しを選手に与えてあげたいです。

――大変失礼な質問になるかもしれませんが、先ほど現役時代は「練習嫌い」だったとおっしゃいました。そんな自分がコーチになるというのはどんな感覚なのでしょう（笑）。

　練習嫌いと言っても、単に無駄な練習が嫌いなだけなんです。ダラダラとノックを受けるぐらいなら、もっとシャドウピッチングをしたいなとか。当然ですが、意味があることならば、どんなきつい練習でもこなさないといけない。なんとなくみんなと一緒にやる、は違う。それぞれに必要な練習なのかを考えて、効率のいい、質のいい練習を目指したいという思いはありますね。

――ある意味、気持ちが入ってない選手を見抜くのはうまいかもしれません（笑）。

　そうですよ！（笑）。昔から人を見ることはすごく好きでした。だから、この選手はここがいいな、こういうことをやっているから上手くいかないんだろうなとか、よく考えていましたし、いっぱい見てきました。身体の使い方や大きさ、筋力が違えば教え方も絶対に変わってくるはず。選手に合ったトレーニングをしっかり提示したいと思います。

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