ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
メッシ好きの息子と父親ウッズの競演、男女ミックス大会の実施…改めて問われるゴルフの可能性
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph byGetty Images
posted2020/12/27 11:00
長男チャーリーくんとラウンドするウッズ。プレー中の仕草はパパそっくり!
ゴルフの多様性を感じた1年
ところでウッズは例年のこの時期、自身の基金が主催するバハマでのツアー外競技・ヒーローワールドチャレンジがあったが、今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になった。それもあって、親子大会に力を注げたことだろう。
コロナ禍に見舞われた2020年。世界中でプロスポーツのシーズンが中断されながらも、ゴルフの話題は失われなかった。かえっていつものツアー競技が少なくなることで、異色の試合にスポットが当たり、ゴルフトーナメントの多様性をいっそう見られた1年だったようにも思う。
ウッズの出場で一躍脚光を浴びた親子大会もしかり。ときにはハンディキャップを設けることで、老若男女が腕前を問わず真剣勝負ができるのがゴルフのいいところ。
ツアー大会が中止になった際、米国で真っ先に行われたテレビ中継を介した無観客でのチャリティゲームは他スポーツのスターを巻き込んだものだった。ウッズとフィル・ミケルソンがNFLのレジェンド、ペイトン・マニングとトム・ブレイディを引き連れたのが5月のこと。マスターズ直後の11月末にはNBAからチャールズ・バークレー、現役のステフィン・カリーも参加した。
ゴルフと接点を持つアスリートも注目され、テニスのラファエル・ナダルは全仏でグランドスラム20勝目を挙げてすぐ、スペインでプロゴルファーも出場する大会に出場。サッカーのギャレス・ベイルはレアル・マドリーからトッテナムに移籍してもなにかとゴルフへの熱中ぶりが取り沙汰されている……。
多くのスポーツ選手に愛され、彼らが尊敬の目でトッププロを眺める様子も、ゴルフが持つ魅力の一端である。
スウェーデンでは男女混合大会も予定
ゴルフ界の中では男女の垣根を崩すようなケースも目立った。欧州では今年、男子主体の1日大会で女子プロが優勝するという事例があった。この12月には、日本女子ツアー出場経験もある中国人のジャン・ジェナリンが母国での試合に参戦。欧州男子ツアーであるボルボ中国オープンが今年、コロナ禍で国内大会に変更されたことから実現した。
女子選手が1人、2人と男子大会にスポット参戦する例は日本も含めてこれまでもあったが、複数の男女がひとつのタイトルを争うミックス大会は2019年に中東ヨルダンで行われたところだった。欧州男子下部ツアーの選手、欧州シニアツアー選手、欧州女子レギュラーツアー選手が参加し、各ホールの設定距離に差をつけることで、男女間のパワーのギャップの影響を少なくするというもの。
レギュラーツアーでも今年、ヘンリック・ステンソンとアニカ・ソレンスタムがホスト役となって、欧州の男女両ツアーによる大会をスウェーデンで立ち上げたところだった。コロナで21年以降に行われることになったが、これまでの在り方とは違う大会がいくつか芽吹いている。発想のはじまりには従来の競技への危機感もある。