ゴルフボールの転がる先BACK NUMBER
メッシ好きの息子と父親ウッズの競演、男女ミックス大会の実施…改めて問われるゴルフの可能性
posted2020/12/27 11:00
text by
桂川洋一Yoichi Katsuragawa
photograph by
Getty Images
感極まって涙するのでは、と思うほどだった。じっくり噛みしめたのは積み重ねてきた勝利の味わいとはまったく違う。タイガー・ウッズは最終ホールのグリーンでいつものガッツポーズをつくるのではなく、愛息を抱きしめるのに力を使った。
「言葉でどう表現すればいいかわからない。とにかくチャーリーと一緒に過ごしたこの経験は、一生の思い出だ」
プロゴルフシーズンはクリスマスを前に一段落。毎年秋に開幕し、翌年の夏に終わるPGAツアーも短い冬休みに入った。この間にもエキシビションマッチは行われていて、ウッズは12月、フロリダで行われた異色の“家族競技”に出場した。
PNCチャンピオンシップは1995年にファザー・サンチャレンジとして始まったイベントで、男女のメジャーチャンピオンがそれぞれの親類とペアを組んで争う。85歳のゲーリー・プレーヤーは孫といっしょ、アニカ・ソレンスタムは父と、優勝したジャスティン・トーマスも長年自身のコーチでもある父とプレーした。余興と思うことなかれ。テレビ中継も行われる本格的な内容である。
出場選手の大半が自身の息子と力を合わせる中、ウッズも11歳になった第2子の長男チャーリーくんと初めて参戦した。ちなみにそれぞれのキャディもウッズの相棒、ジョー・ラカバ親子が務めるというユーモアもあった。
スイングもガッツポーズもそっくり
故障にあえいでいた数年前、ウッズはチャーリーくん目線での自分を「僕はYouTube上のゴルファー。彼にとってはリオネル・メッシのほうが大スターだ」と自虐していた。82勝のうちのほとんどは父になる前に挙げたもので、子どもたちのナマの記憶には最高にカッコいい優勝シーンが刻まれていない。だからこそ、昨年4月のマスターズで優勝し、長女サムさんと息子を抱きしめた場面は感動的だったのである。
サッカーに熱中していたチャーリーくんのゴルフ歴はさほど長くないながら、最近はジュニアの大会で好成績を残すようになってきたという。それ以上にこのマッチで周囲を驚かせたのが、プレー中の仕草だった。セットアップ、フィニッシュでクラブを回す姿、そしてガッツポーズ……どれもパパそっくり! 結果は7位に終わっても主役はふたりと言えた。一年の締めくくりとしては、なんともほっこりしていて心地いい。