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上沼恵美子も「ごめんね」 M-1新王者マヂカルラブリーが勝った「ネタ順ギャンブル」とは【審査員・全採点表も】
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byM-1グランプリ事務局
posted2020/12/21 17:45
2020年のM-1を制したマヂカルラブリー。3年前、「よう決勝まで残ったな」とコメントした審査員の上沼恵美子も「ごめんね」と語っていた
他の組は勝負ネタを決勝の1本目に
インディアンスは決勝直前に行なわれた敗者復活戦と同じネタ。残りの7組はすべて、準決勝で披露した勝負ネタを決勝の1本目に持ってきた。
だが、マヂカルラブリーだけが準決勝で披露したネタ――“つり革”を最終決戦に温存したのだ。
村上「どっちを先にやるかは、笑神籤が引かれる寸前まで迷っていましたね」
野田「直前のおいでやすこがさんのネタを見ているときに決めました」
村上「最初は“フレンチ”をやろうと思っていたんですけど、途中で野田さんが逆にしようと言い出しまして(苦笑)」
野田「トップ3がだいぶ点数を出していたし、どうしても“つり革”のネタをやりたかったんです。“フレンチ”のネタの後半が弱いのは分かっていて、点数下げられて届かなかったら、“つり革”をやれないまま終わっちまうなと。やらないで散るより、やって散りたいと思ったんです」
「賭けましたね。正直ギャンブルでした」
しかし、彼らは最終的に1本目に“フレンチ”を選択する。なぜか――。
「賭けましたね。正直ギャンブルでした。どうなるか分からなかった」
野田が語れば、村上が続く。
「優勝の目が残るのは、“フレンチ”が先、“つり革”が後だと思ったので」
マヂカルラブリーはその賭けに、まんまと勝ってみせたのだ。
おいでやすこが、インディアンスも称えたい
今大会で個人的に最も笑ったのは、おいでやすこがの1本目のネタだった。
ピン芸人のユニットである彼らが示したのは、ボケとツッコミで構成される漫才という芸事の魅力だろう。
こがけんの「歌ボケ」と、おいでやす小田の「キレツッコミ」は、ピン芸人として長く活動する彼らの代名詞となっている鉄板芸。普段は個別に披露されている芸が、コンビを組んで掛け合わされることで、ピンのとき以上に大きな笑いの渦を起こしたのだ。ボケとツッコミの相乗効果が無限の可能性を秘めていることを、改めて感じさせられた。
インディアンスの果たした役割についても触れないわけにはいかない。