その5）強豪・仙台育英の“絶対的エース”

　逆転優勝を信じて走った仙台育英のアンカー白井は素晴らしい走りを見せた。前を行く世羅の塩出翔太（2年）との差は31秒。5キロという短い距離で最後は13秒差まで詰めた。前大会は2区で区間賞を取り、チームの優勝に貢献したが、今回は7区で区間賞こそ山田修人（倉敷2年）に譲ったが、その力強い走りは仙台育英のエースであることを証明した。5000mは13分58秒、強気な攻めの走りは、大学でさらに磨きがかかり、強い選手になりそうだ。

1、2年生の逸材たち

　1、2年生には、来年がさらに楽しみな選手が増えた。

　佐久長聖の吉岡大翔（1年）は、4区において8秒差で前を行く洛南を6.3キロ地点でとらえ、区間賞を獲得する走りでチームを2位に押し上げた。レース前は嘔吐するなど非常にナーバスになり、レース中も苦しそうな表情を見せていたが、それでも前との差を詰めていった。その姿には、1年生とは思えない力強さを感じた。佐久長聖は例年、1年生は1区3区4区の長い距離は負担を考えて起用しないようにしてきたが、今回は前例がない中での4区起用。高見澤監督の期待の大きさがわかる。11月の日体大記録会5000mで1年高校歴代1位の13分50秒27を出して、一気に注目されたが、これからさらに注目される存在になるだろう。

　倉敷のアンカー山田修人（2年）も素晴らしい走りを見せた。

　襷を受けた時点では5位、トップの世羅との差は59秒差、2位の仙台育英とは28秒差だった。最後トラックに入ってきて、100mでは3位の洛南を差しそうな勢いだった。見るからにタフな走りで、非常にロード向き。速さよりも強さを感じる選手だった。

　優勝した世羅のアンカーの塩出翔太（2年）は、図太いメンタルを見せつけ、終始落ち着いた走りを見せた。後ろから迫ってくる仙台育英の足音に気が付いていたが、「少し意識しただけ」と意に介さずに走り切り、何とも頼もしい存在だ。5000mは13分57秒88で、1区（区間9位）を走った同期の森下翔太とは持ちタイムがほぼ同じ（13分57秒16）で良きライバル、最高の仲間でもある。世羅は、今回出走した多くの選手が1、2年生。今回の経験を活かし、そしてさらなる強化で来年は彼らが区間賞を取り、自らが持つ大会記録2時間1分18秒を更新できるのではないだろうか。

【次ページ】　大学の陸上界で活躍する“大物ルーキー”になれるか？