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青学・原監督も驚く「時代が変わった」 今季の箱根駅伝“1年生ランナー”から史上最強ルーキーが誕生するか?
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2020/12/17 17:03
順天堂大学のゴールデンルーキー三浦龍司。1017号掲載「時代を変えるルーキーズ」のアザーカット
三浦が1区で見事なラストスパートを見せて区間新記録をだすと、4区では東海大学の石原翔太郎が、そして5区では青山学院大学の佐藤一世が区間新記録を樹立したのだ。
全日本は2018年に大幅な区間変更があり「区間記録」の歴史は浅いとはいえ、ルーキー3人が区間新というのは異例で、青学大の原晋監督も以下のように述べていた。
「1年生で区間新3つは普通は考えられないですよ。何か時代が変わったというか、才能のある子どもたちが陸上、そして長距離に来てくれるようになったのかもしれないね」
しかも、三浦は重圧のかかる1区で、石原と佐藤はがそれぞれチームの順位を上げながらの区間新であり、ロードで襷をかけて走る際の強さである「駅伝力」の高さを証明しながらの区間新だったのだ。
「一流ランナーの証」上位10名は全員28分台
そしてもうひとつが持ちタイムのレベルの高さだ。
エントリーされたルーキー53名のうち、10000mの記録上位10名は以下のようになる。
1位 吉居大和(中大) 28分08秒61
2位 白鳥哲汰(駒大) 28分14秒86
3位 青柿 響(駒大) 28分20秒42
4位 児玉真輝(明大) 28分22秒27
5位 鈴木芽吹(駒大) 28分23秒87
6位 花尾恭輔(駒大) 28分30秒48
7位 佐藤一世(青学大) 28分54秒66
8位 菖蒲敦司(早大) 28分58秒10
9位 石井一希(順大) 28分58秒54
10位 伊東大翔(中大) 28分59秒59
なんと10位まで全員が「一流ランナーの証」といえる28分台となる。前述した順大・三浦は公認記録を持っていないだけで、確実に10位以内の力をもっているため、実質的にはさらに28分台の選手数は多くなりそうだ。
思えば、前回もルーキーが勝負のカギを握っていた。優勝した青学大は2区で1年生の岸本大紀(今回は故障でエントリー漏れ)がライバル校のエース級を相手に粘りの走りを見せたことが3区以降での逆転につながり、また7区では東海大・松崎咲人も区間3位の力走で順位を2位にあげた。今回のエントリーメンバーを見る限り、それ以上のインパクトを残しそうだ。
特に駒大は、6位までに4人が顔を出すなどルーキーの充実ぶりでは際立っており、チームの勢いを象徴する存在になっている。鈴木、花尾は全日本の舞台を踏んでいるものの、白鳥、青柿は大学駅伝未経験と不安要素はもちろんある。
だが、それでも2年生エースの田澤廉が、全日本、そして12月4日の日本選手権10000mで「学生最強&最速」を証明する充実の走りっぷりを見せているだけに、彼ら1年生がどの区間にエントリーされるのか、またそこでどんな走りをしていくのかが、今回の優勝争いにも大きく影響するだろう。
2021年、箱根駅伝。選手を守るために、そして大会を無事に開催するために沿道での観戦や応援を控えて、という呼びかけが主催者や中継局からされている。異例の“静かな箱根路”、その主役はピカピカのルーキーたちかもしれない。