立ち投げから、軽く投げてくる形がいい。快腕は、軽く投げても、必ず「全力投球」と同じフォームで投げてくる。スピンの効いたボールがミットに突き刺さる。やっぱり、モノが違うわ……今日も、たいへんだぞ……。 

鼻にツーンと抜ける激痛

　4時をまわって、急に陽射しのパワーが頼りなくなって、ふっ飛んでくるボールの輪郭がにじんで見える。腰を落として、目を細めてミットを構える。いい立ち方だ。アゴの下でグラブをセットした姿が美しい。

　こりゃあ、来るぞ……と、最初の1球がこっちの左上方に抜けて、ミットが間に合わない。ミットのネットの先端をやっとかすめただけだった。

　高めのスピンがすごい。3球目が真ん中に来た。ミットの芯だ！と思ったボールがミットにドカン！と来て、手のひらの骨が粉砕されたか……と思った。  

　鼻にツーンと抜ける激痛。

　なんだ、今の……。動いてる……？　それも、ミットに入るほんとの寸前で動いてる？

　右打者の外に構える。その通りのラインで来たストレートが、ホームベースの上で、グイッと中に入った。

　うわっ！やっぱり、すごく動く。

　地肩、握力、腕っぷし……抜群に強いヤツほど、リリースの一瞬にボールをつぶすようにして投げるから、回転は不規則になりがち。

　握力を訊いたら、「60ちょっとです」と教えてくれたが、いやいや、そんなもんじゃない。トレーニングを重ねるうちに、「70キロ前後」にはなっているはず。  

　シュート回転して、中に入ったやつをやられました……。やられた投手の言いわけに、よくこういうのがあるが、へばったり、力んだり、縫い目に指のかかりきっていない「投げ損じ」のシュート回転は、球道半ばからダラッと中に入ってくる死んだボール。ベース上でグイッとねじ込んでくれば、ボール1つ分ほど中でも、球勢でスイングを跳ね返し、ファールか差し込まれたフライに打ち取れる。

「150ぐらいいったろ！？」  

　その次の内角が速かった。

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