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来秋ドラフト目玉「最速150キロ中学生」 高2になった“高知高の剛腕”のボールを受けてビックリした話
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byAFLO
posted2020/11/29 17:03
「最速150キロ中学生」と当時から全国的にも注目されている森木大智(高知高・2年)
構えたミットを一度下げてタイミングを測っていては、もう間に合わない。ミットをそのまま手前に引いて、高さを変えずにタイミングをとって、ギリギリ間に合う体感。
「150ぐらいいったろ!?」
「45ぐらいじゃないですか……」
ひさしの下の浅黒い顔が笑っている。受けた体感は、間違いなく「150キロ」。夕方の薄暗さを割り引いても、それぐらいはいっている。
なるべく、投げないようにして、投げる
それにしても、その程度の力感で、どうしてこんなに速く感じるボールがふっ飛んでくるのか。
「そこまで力を使わないで、打者の手元で伸びるストレートを投げるための取り組みを、ずっとしてきてるんです」
左半身の開きを極力抑えながら、股関節を使って体重を移し換えて、体の左右のターンにスピード感を加える。そういうメカニズムだ。
なるべく、投げないようにして、投げる――オリックスのエースだった頃の金子千尋投手(弌大、現・日本ハム)の言葉を、何かの記事で読んだことがある。
森木大智、今日は気分よさそうにガンガン投げる。
去年は、体が正面を向くのももっと早く、せっかくテークバックで溜めたパワーを放散させてから、腕だけで投げていた。勿体ないなぁ……と思いながら見ていたことを思い出す。
体の左右が一気にターンして、きれいなタテの軌道の腕の振りから、右打者のアウトローにピシャリときまって、今日初めて、キャッチャーミットが、パーン!と乾いた快音をあげてくれた。
ドラフトって言われても……
「まだ1年も先の話なんで、ドラフトって言われてもあんまり実感ないんですけど……」
と、控えめな発言だった森木投手だったが、顔には、
「バリバリ意識してます!」
と書いてあった。