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高卒1年目で異例の戦力外通告…どん底から一軍に這い上がったオリックス本田仁海「負けてらんない」
posted2020/11/27 17:01
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
札幌ドームのマウンドに上がったオリックスの右腕、本田仁海の顔は青ざめて見えた。11月1日の日本ハム戦。プロ3年目の本田は一軍初登板、初先発を果たした。
「めちゃくちゃ緊張しました。初めての一軍で、札幌ドームも初めて。人(観客)がいっぱいいて、ファームとは全然違いました」
日本ハムの1番・西川遥輝への初球は、150kmの伸びのあるストレートが、捕手・頓宮裕真のミットに吸い込まれた。ストライク。しかしその後はボールが浮き、5球目の151kmのストレートをセンター前に運ばれた。
その後、内野手のエラーと四球で無死満塁のピンチを背負うが、併殺の間の1失点でしのぐ。しかし2回以降は連打を浴び、守備のミスも絡んで失点が重なる。結果的に、4回102球、7失点(自責点は3)でマウンドを降りた。
中嶋聡監督(当時は監督代行)は、ベンチに戻った本田に歩み寄り、「全然力を出しきれていないぞ」と本田の帽子のつばをコツンとたたいた。二軍監督として昨年から見てきた指揮官にしてみれば、「本田はこんなもんじゃない」という思いがあったのだろう。
本田自身も、「ボール1個分低くとか、もう1個分インコースに投げられていたら、違っていたかもしれない。こうしてチャンスをもらったんですけど、僕の実力不足で、ああいう結果になってしまった」と悔しさをにじませた。
マウンドで痛感した一軍のレベル
今年の3月から、「低め」と「インコース」に投げ込むことを課題と意識してやってきた。二軍で登板を重ねる中で、その課題をある程度クリアできたと感じていたが、一軍で登板してみて、“ある程度”では通用しないことがわかった。
「ファームでは、少々高くても球威や変化球でごまかせる部分があるんですけど、一軍だとやっぱり、高い球は打たれるし、変化球のボール球は振ってこないので、違いを感じました」
しかし悔しさの一方で、2年前どん底にいたことを思えば、今年ファームで結果を残し、シーズンの最後に一軍のチャンスを与えられたことには、「ここまでこられた」という思いもある。