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高卒1年目で異例の戦力外通告…どん底から一軍に這い上がったオリックス本田仁海「負けてらんない」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2020/11/27 17:01
11月1日の日本ハム戦でプロ初登板初先発を果たした本田仁海。4回7失点とホロ苦いデビュー戦となったが、得るものも多かった
半年近くボールを投げられず「きつかった」
リハビリが始まると、「落ち込んでいる場合じゃないな」と、少しずつ前向きな気持ちになっていった。
「悔しかったですけど、怪我したのは僕なので。球団の思いも聞いたので、治して早く支配下に戻ろうという気持ちになっていきました」
それでも、絶えず不安はつきまとった。
「他の人が投げているのに、僕は半年近くボールを投げられなかった。野球をしにここにきているわけで、僕はピッチャーで、投げることが仕事なのに、それができないというのは本当に悔しかったし、本当にきつかったです」
もともと課題だった体力面を強化するための期間と位置づけ、下半身を中心にトレーニングに明け暮れた。
ようやくスローイングができるようになったのは昨年1月。最初はテニスボールを使った。
「10mほどの距離で、ほんの軽く10球くらい投げただけでも筋肉痛になりました。投げ方もわからなくなっていて、すごく変な感じでした」と振り返る。
先輩から吸収したフォーム
ピッチャーとしての投げ方を思い出し、再構築していく中で、他の投手の映像を参考にした。その中の1人が山本由伸だった。山本は本田より1年先に、同じドラフト4位で入団し、2年目はリリーフとして活躍していた。
復帰後の本田の投球フォームは山本によく似ていた。特に左足の上げ方。体に引きつけず、体から離してゆったりと上げるのが特徴だ。
「あの人に合ったフォームだと思うので、僕が完全にマネをするというのは無理。体の柔軟性が違うので、腕とかはマネできないんですけど、ところどころ僕にも合うところがありました。足の上げ方は、以前は体に引きつけていたんですけど、遠くに離して上げるというのをマネしてやってみたら、力みなく上げられて、バランスを取りやすいと感じました」
昨年4月にファームで復帰登板を果たすと、約3カ月後の7月、早くも支配下登録を勝ち取り、2桁の背番号「96」を取り戻した。