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天龍源一郎、オカダ・カズチカとの“激怒の引退試合”から5年、再会して「高田延彦と双璧だよ」
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byEssei Hara
posted2020/11/19 17:02
5年前、天龍源一郎とオカダ・カズチカは“昭和プロレス”を繰り広げた
「どうなっても知りませんよ。だったらやりましょう」
そして天龍は15年11月15日、両国での引退試合開催を発表すると、最後の対戦相手としてオカダを指名。団体を通じて正式にオファーを出すだけでなく、新日本プロレスの事務所に自ら足を運んで交渉し、最終的には2015年8月16日の新日本・両国国技館大会に乗り込んだ。
そして新日本のリング上で天龍は、「11月15日の俺の相手、今日決めるって言っただろ、コノヤロウ! ハッキリせい。昭和のプロレスを味わう最後のチャンスだぞ」とアピール。
これを受けてリングインしたオカダは、天龍に対して「引退されるそうですね。お疲れさまでした」と、まず挨拶すると「天龍さんにひとつだけ言わせてください。僕と同じ時代じゃなくて良かったですね。どうなっても知りませんよ。だったらやりましょう」と、天龍を激怒させたセリフを繰り返しながら、対戦を受諾した。
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リアルな感情や想定外の出来事が、実際の試合としてリングに反映される。これぞまさに“昭和プロレス”だと言えるだろう。
こうして実現した天龍源一郎vs.オカダ・カズチカは、最終的に「プロレス大賞」で、この年の年間最高試合賞を獲得。舌禍で始まった二人の因縁は、極上のプロレスへと昇華したのだ。
「イスに背もたれすることもできず緊張して(笑)」
あれから丸5年。
場所を後楽園ホールに変えて、再びリング上で相対する両者。5年前とは逆に、まず天龍源一郎が先に入場。続いて「RAIN MAKER」のテーマ曲に乗ってスーツ姿のオカダが、スーパースターのオーラたっぷりに入場した。
そんなオカダの姿に天龍は、「今、素直に『おお、カッコいいな』と思ったよ。高田延彦とやったときも思ったけど、ちょっと引っ掛かったね」と発言。天龍はかねてから、96年12月13日に両国国技館で再戦した時の高田延彦の入場を「俺が闘ってきた中で、一番カッコ良かった」と語っていたが、「オカダ・カズチカはその高田延彦と双璧だよ」と絶賛したのだ。
これを受けてオカダも「天龍さんには、今の新日本プロレスのどのレスラーにもないオーラがある」「5年前と何も変わらないし、今ゴングが鳴ったら闘えるんじゃないか。さっき控室にいるときも、僕はイスに背もたれすることもできず緊張して座ってました(笑)」と、5年前とは違う笑顔で素直な気持ちを語った。