歌って踊ってBL展開、そして“ガチ”格闘技マッチ...エンタメ・プロレス『まっする』で何が起きた？

　今では“本気”“一生懸命”といった意味のカジュアルな俗語として広く使われているガチ（ンコ）という言葉だが、本来は相撲・プロレス業界における隠語だ。隠語である以上、業界の人間は表立っては使わない。というより、基本的にそんな言葉はないものとされる。

　だが11月9日、“プロレスの聖地”後楽園ホールのスクリーンに堂々と「プライドを掛けたガチンコ勝負」なるフレーズが映し出されてしまった。やらかしたのは、よりにもよって『まっする』（ひらがなまっすると読む）だ。マッスル坂井／スーパー・ササダンゴ・マシンがプロデュースする、DDT系エンターテインメント・プロレスの極北である。

　前身であるカタカナの『マッスル』から、このプロレスイベントは台本があることを公言してきた。それ自体が「本当は台本があるんじゃないか」などと揶揄される、プロレスが置かれた状況への批評になっているわけだ。

　DDTの若い選手たちをフィーチャーし、その可能性を広げようとする『まっする』で、坂井は新たなプロレス＆エンタメフォーマットを開発した。「2.9次元ミュージカル」である。2.5次元ミュージカルばりに、選手たちが役（キャラ）を演じ、歌って踊ってもちろん試合もする。

DDT＝ドメスティック・ドタキャン・チーム？

　演目は『刀剣乱舞』ならぬ『必殺技乱発』。フィニッシュらんぱつ、と読む。主人公チーム、プロレス技を擬人化した神・必殺技男子（フィニッシュだんし）に対する悪のチームはパイプイス男子。会場の物販コーナーでは選手たちが歌う曲のCDや原作マンガ（大会開催に合わせた書下ろし。通称・薄い本）が販売される。会場にはペンライトを振る女性ファンも。選手（キャラ）同士のBL的展開もお楽しみの一つだったりする。

（C）DDTプロレスリング

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　今回のストーリー、その舞台はプロレス団体DDT。といってもドラマティック・ドリーム・チームではない。あくまでミュージカル、フィクションの世界なのでDDT＝ドメスティック・ドタキャン・チームである。

　そこに練習生として入団した必殺技男子と、ライバル団体所属となったパイプイス男子が全面対抗戦を闘うことになる。

　歌あり踊りあり、なおかつストーリーのモチーフとしてUWFが使われ、古参プロレスファンがニヤリとするようなネタがそこかしこにちりばめられている。そしてクライマックスで『プライドを掛けたガチンコ勝負』が展開されることになった。

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