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引退発表当日…オシムが語った“サッカー選手・中村憲剛”「できることなら撤回してほしい」
posted2020/11/12 17:02
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Takuya Sugiyama
イビチャ・オシムとは定期的に連絡を取り続けている。ここに掲載するのは、11月1日の電話による直近の会話である。
この日は、オシムが日本代表メンバーとしても信頼を置いていた中村憲剛選手が引退を発表した日。オシムが語った“プロサッカー選手・中村憲剛”とは――?(#2に続く/全2回)
◆◆◆
中村憲剛の引退は「サッカーにとって大きな損失だ」
――元気ですか?
オシム ああ、元気だ。いったい何があったのか?
――中村憲剛が今季限りの引退を発表しました。
オシム 憲剛はまだプレーしていたのか。引退するなら彼のために何か別のスポーツを探してやるべきだ(笑)。日本サッカーにとって大きな損失だ。彼自身にとってもサッカーにとっても残念なことだ。彼はピッチの上で常に的確なプレーを実践し、オーラを発揮し続けた。本当に優れた選手でスターとしての人生を歩んだ。そうした選手が表舞台から去るのはとても残念だ。だが、人生とはそういうものでもある。
私個人にとっても残念だ。というのも彼はそのパスやシュートなどでサプライズを与えた選手であるからだ。プレーのひとつひとつが驚きだった。彼が放ったシュートに何度驚かされたことか。素晴らしいパスの数々も同様だ。
――フリーキックもありました。
オシム それらが失われてしまうのは、サッカーにとって大きな損失だ。失うのはひとりの救世主であり象徴だ。サッカーの守護者であり、美しいプレーの体現者でもある。できることなら撤回して欲しいし彼と話をしたい。そしてまだピッチを去るべきではないと言いたい。
「彼はサッカーを愛した」
――しかし憲剛ももう40歳です。
オシム 彼こそ、ピッチの豊饒さを象徴していた。いるといないとではサッカーの豊かさが全然違う。彼には随分厳しいことも言ったが、彼のような選手がチームにいるのは素晴らしいことだ。
――憲剛にメッセージをお願いします。