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「ぶん殴られて痛いなんて未熟ですよ」プロ格闘家・青木真也が東大卒プロゲーマー・ときどにズバリ
text by
おおたとしまさToshimasa Ota
photograph byWataru Sato
posted2020/11/07 17:02
“異業種格闘対談”にのぞむ東大卒プロゲーマー・ときど(左)とプロ格闘家・青木真也
ときど うわー、その域まで達しちゃうんですね。
青木 実際にぶん殴られて痛いっていう次元は、言い方悪いですけど、ちょっと未熟ですよ。僕は格闘技選手で「命かけてやってる」ってやつが大っ嫌いなんですよ。自分の「生き方」はかけてるかもしれないけど、「命」はかけてないんで。
ときど 「生き方かけてやってる」ってことなら、僕でも自信もって言えます。そう考えると、リアル格闘技も格闘ゲームも同じだって気がしてきました。
青木 本当に痛いのは、負けた悔しさとか、自分の表現のつたなさとか、社会と自分が思っていることの乖離だったりするわけで。僕はそれがわかるから、ゲーマーに対して「アイツら、実際に戦ってないだろ」とは思わないですね。やっぱり試合前って緊張するんですよね?
ときど 昔は試合を早く終わらせたくて、当たれば勝ちだし、外れれば負けみたいな、イチかバチかの戦い方を選択していたこともあったんです。
青木 勝負から逃げたいんですよね。
ときど でも本当に強いひとは、そこでグッとこらえて、相手が苦しくなって洗面器から顔を上げるのを待つみたいな戦い方をするんですよ。
青木 要するに、相手が折れるのを待つってことですよね。僕も試合をするときは、相手といっしょに心中するつもりなんですよ。それを僕はふざけて「玉川上水で無理心中して自分だけ逃げる」って言うんですけど(笑)。
戦いってそれくらい苦しいもんですよね。一発ぶん殴ってきれいに倒して終わらせようなんて思うのは、勝負から逃げてるってことだと思います。
ときど それって勝負じゃないんですよね。
「ジャッジがおかしいとかいうやつ、僕はほんと嫌い」
ときど 格闘ゲームの世界でも、技術とか作戦の差が埋まってきているので、今後は、どういう精神性で勝負にのぞむのかというところに焦点が移っていくはずです。でもまだ青木さんがおっしゃったようなレベルまでは達していないと思います。いつごろ、その境地にたどり着いたんですか?