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「ぶん殴られて痛いなんて未熟ですよ」プロ格闘家・青木真也が東大卒プロゲーマー・ときどにズバリ
text by
おおたとしまさToshimasa Ota
photograph byWataru Sato
posted2020/11/07 17:02
“異業種格闘対談”にのぞむ東大卒プロゲーマー・ときど(左)とプロ格闘家・青木真也
ときど 僕らの競技って、実際に自分のカラダが痛くなるわけではないんですよ。だからゲームだけをやっているとメンタルを強くするのって限界があるのかなって思っています。それで、勝てなくなってきた時期に空手を始めましたし、筋トレで自分を限界まで追い込めばメンタルを鍛えられるのかなと思って取り組んでいます。そういうことをやっていかないと、30半ばに差し掛かってこれからどんどん勝てなくなっちゃうのかなって。
青木 おっしゃるとおりです。ターザン山本さんという有名なプロレスライターさんの言葉に「プロレスしか知らないやつは、プロレスのことを何も知らない」というのがあります。僕はそれを「格闘技しか知らないやつは、格闘技のことを何も知らない」と言い換えて使っています。
ときど わかります!
青木 競技のなかの技術を洗練するだけでは、1日1時間半とかの練習の間でしかレベルアップしない。大切なのはこうやって分野の違うひととお話をするような機会です。こういう分野にこういう技術がある、こういう考え方があるっていうのを見つけて、格闘技に持ってくる――これを僕は「横移動」って呼んでいます。それが“日常を稽古にする”強さだと思います。格闘家がほかのことをやっていると「余計なことをやって」とみんな言うんですけど、ほかのことを経験するとそれが幅になるから。ゲーマーにとって空手がいいのかどうかはわかりませんが、ときどさんがゲーム以外のことをする理屈はわかります。
ときど 自分が強くなるためだけじゃなくて、ゲーム業界全体を社会に認めてもらうためにも、そういう態度が大切だと思っています。「勉強しないでゲームばっかりやってどうする?」って怒られるのがまだまだ世の中の普通じゃないですか。でも、どんなことでも1つのことを一生懸命やろうと思ったら、当然それだけをやるのではなくて、ほかの分野から学ぶ必要が出てきます。僕らの世界でいえば、数字に強くないと論理的な戦略を立てられませんし、海外の選手との情報交換も大事ですから語学だって必要です。
「ぶん殴られて痛い」って次元は未熟ですよ
青木 一方で、さっきときどさんは「(ゲームは)実際に痛くないから」っておっしゃいましたけど、それは関係ないと思う。だって、僕らぶん殴られて痛いのなんて知れてるもん。