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「彼は身長高くて、カッコ良くて、モテて…。僕は…」“最強の2番手”武田勝が語るダルビッシュ
text by
Number編集部Sports Graphic Number
photograph bySports Graphic Number
posted2020/11/06 17:01
今季から日本ハム一軍投手コーチを務めている武田勝。「ダルよりも僕みたいなタイプの選手が絶対多い。なので共感しながら今の選手たちに話もできる」
「2番手、嫌いじゃないんですよ」
「雰囲気とか仕草っていうので気持ちが昂ってるな、っていうのは伝わってきてました」
第2戦で先発したダルビッシュは、試合後に「死球でもいいと思って、思い切り腕をふった」と言った通り、執拗な内角攻めで西武打線を八つ裂きにし、完封。「相手にダメージを与えたかった」と自らの残像を相手に植え付け、第3戦の武田にバトンを繋いだ。
「勝ち負けよりも、ダルビッシュの正反対のピッチングをどう表現できるか、の方が不安でした」
続く第3戦では、武田が5回2失点の勝ち投手となる。本人曰く「陰と陽」の2人の合作により勝ち取った2勝だった。
「『乗っかっちゃえ!』って感じです。前日にインコースいってくれて、僕はあんまり窮屈にならずに済みました。ポンポンテンポよく投げていこう、というバッテリー間の話はスムーズにいきましたよね。当時の西武は好球必打で、早打ちというか、甘い球をどんどん振っていくような打線だったので、駆け引きではないですけど、チェンジアップとかを外に投げてストライクからボールにすれば振ってきてくれる、という安心感はあったんですよ。あとはダルの翌日の、120キロ台のストレートじゃないですか。そういう意味では2日間にわたって緩急がついた試合だったんじゃないかと思います」
日本ハム一筋11年、4年連続2桁勝利を含む82勝。2016年の現役ラストイヤーには「俺のために優勝しろ」と語ると、チームはリーグ優勝を果たし、見事日本一となった。この時の日本シリーズ第3戦の試合前、ダルビッシュはこの言葉が書かれたTシャツを着て、遠くアメリカから日本ハムにエールを送っている。
武田はあらためて振り返る。
「自分は先陣切っていくタイプじゃない。2番手、嫌いじゃないんですよ」
あの頃のダルビッシュには、最強の「陰」がついていたのである。