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斎藤佑、野茂、清宮を逃しても山田哲人、佐々木主浩、村上宗隆…ドラフト「外れ1位」こそ味わい深い
posted2020/10/27 11:03
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kyodo News
CSファイナルステージが終わると、日本シリーズ開幕まで数日のブランクがある。最近はこの期間にドラフト会議が開かれるようになった。
この時期になると、私はある句を思い出す。
「琴となり 下駄となるのも 桐の運」
幕末の林忠崇というお殿様の句だそうだ。
柾(まさ)の通った美しい桐の木も、伐り出されてしまえば、美女が白魚のような手でつま弾く琴になるか、むくつけき男が素足で踏んづける下駄になるかは、運しだいだ。
人の世はままならぬものだ、という意味なのだろう。
ドラフト会議も「運」が大きく左右する。現行のルールでは1位指名選手が重複した場合は「くじ引き」で決めることになっている。くじで外れた球団は「外れ1位」を指名しなければならない。薄い封筒に入った「当りくじ」が球団や選手の運命を左右するのだ。野球選手も「桐の木」とさして変わらないのだ。
そうした視点で、過去の指名競合選手と「外れ1位」で獲得した選手を眺めてみると、誠に味わい深い。
最も重複した野茂の8球団
日本のドラフトで最も指名が重複したのは、1989年の野茂英雄で、8球団が競合した。
<1989年 野茂英雄(新日鐵堺)>
近鉄 指名権獲得
横浜大洋 外れ→佐々木主浩(東北福祉大)
阪神 外れ→葛西稔(法政大)
ヤクルト 外れ→西村龍次(ヤマハ)
ダイエー 外れ→元木大介(上宮高)×入団拒否
オリックス 外れ→佐藤和弘(熊谷組)
ロッテ 外れ→小宮山悟(早稲田大)
日本ハム 外れ→酒井光次郎(近畿大)
野茂は1年目から4年連続最多勝、奪三振王、1994年オフにはMLB挑戦を表明し、ドジャースなどで大活躍。その後のNPB選手のMLB挑戦のルートを開拓したパイオニアだが、
そのくじを外した7球団が指名した「外れ1位」も錚々たる顔ぶれだ。