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斎藤佑、野茂、清宮を逃しても山田哲人、佐々木主浩、村上宗隆…ドラフト「外れ1位」こそ味わい深い
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2020/10/27 11:03
斎藤佑樹と塩見貴洋を外した結果、山田哲人を獲得したヤクルト。ドラフト以上に大事なのは、その後だろう
「外れ外れ1位」の山田哲人
2010年のドラフトは、今から見ると実に味わい深い結果になっている。
甲子園を沸かせたハンカチ王子こと斎藤佑樹は、早実高から早稲田大へ。この年、早稲田大の同僚の大石達也の6球団に次ぐ4球団から重複指名を受けた。
<2010年 斎藤佑樹(早稲田大)>
日本ハム 指名権獲得
ロッテ 外れ→伊志嶺翔大(東海大)
ソフトバンク 外れ→山下斐紹(習志野高)
ヤクルト 外れ→山田哲人(履正社高)
斎藤佑樹は日本ハムが引き当てた。くじに外れたヤクルトは、「外れ1位」で八戸大の左腕・塩見貴洋を指名したが、大石達也のくじを外した楽天と指名が重複。くじ引きでまた敗れて、履正社高の山田哲人を指名することになった。
つまり、今を時めくトリプルスリー3度の山田哲人は「外れ外れ1位」なのだ。
結果的にヤクルトの首脳陣は「よくぞ外してくれた」と言うところかもしれない。
当時のヤクルトには田中浩康という優秀な二塁手がいたが、山田は急成長して3年目にポジションを奪い、4年目には全試合出場して最多安打をマークした。
履正社・岡田監督も驚く成長
私は3年ほど前に履正社高の岡田龍生監督に話を聞いたことがあるが「足はめちゃくちゃ速かったが、こんなにいい打者になるとは思わなかった」と言った。恩師でさえも驚くほどの急成長ぶりだったのだ。
山田哲人が下位指名だったらこんなに早くチャンスが与えられなかったかもしれない。外れ外れにせよ「ドラ1」の称号は大きい。もちろん、山田の才能を見出してうまく育てたヤクルト首脳陣の功績も大きい。
こうしてみるとドラフト1位で入団して鳴かず飛ばずで終わった選手もたくさんいることがわかる。彼らの中には故障をしたり、指導者に恵まれなかったり、競合するライバルがいたりして、十分に実力を発揮することなく消えていった選手も多いはずだ。
まさに「琴となり、下駄となるのも」運しだいなのだ。
2018年も金足農高の吉田輝星、大阪桐蔭高の根尾昂、藤原恭大など、複数指名が予想される逸材がいた。彼らがどんな「運」のもとで、プロ野球でいかなる数字を上げるか。楽しみに見てみたい。